柳 先天的なものじゃなくて?
長谷川 だって柳さんはじっと座っていられるし、集中できるし。先天的なADHDだったらできませんもん。最近は安易な診断に警鐘を鳴らしている医者もいますよ。たとえば教室で机に一時間座っていられないレベルでないと、ADHDと診断してはいけないという意見があります。安易な診断、ラベリングをしても解決につながりません。ADHDという診断が学校の先生たちにとって都合がいいのは、指導の責任を免れられるところでしょうね。だから最近は「病院で診てもらってください」と言われ過ぎる傾向にある。診てもらったら、あとはお医者さんやスクールカウンセラーとかそちらで、っていうふうになってくるんですね。結局一番欠けてしまうのは、そういった子供と一緒に暮らしている、育てて苦労している親のしんどさ、辛さへの理解です。お子さんは何年生?
柳 小学四年です。
長谷川 四年生。この年齢ですとお母さんが癒やされていくことによって、子供さんが変わっていく余地が大きいんですよ。だからこそご自身の心の傷を少しでも癒やすことに一生懸命になられたほうがいいと思う。
柳 息子は鋏で自分の髪を切るんです。いくら叱っても、私や先生の目を盗んでは、切るんですよ。
長谷川 それは柳さんが幼いころに、敢えていたずらされるような状況に身を置くのと、近いですね。
柳 嘘吐きなんです。「嘘吐き!」とひっぱたいても、「ほんとうのことを言いなさい」と泣いて頼んでも、嘘に嘘を重ねて、とんでもない創り話をするんですよ。
長谷川 「ほんとうのことを言いなさい」と言えば言うほど、ほんとうのことを言えなくなる。ほんとうのことを言っても合理化されて返ってくる体験を積んでいるからね。嘘は典型的なSOSのサインですよ。怒るのをやめてしまえば、お子さんはそういうことをだんだんやらなくなる。怒られるためにやっているようなものなんだから。
柳 学校でも嘘ばかり吐いて、先生を困らせています。
長谷川 それはその嘘に、先生が過剰反応するから。「何々君、いいよ。何々君の話は面白いからね」って、嘘をそういうふうにかわしながら受け止めれば、嘘の問題は解消していきます。
柳 私の母親は、もっと厳しくしなさい、と言います。
長谷川 うん、母親は厳しい中を耐え抜いたひとなのでね。
柳 母子家庭で、父親が、「締めるひと」がいないから、親に平気で嘘を吐くような真似ができるんだと。