大倉 冨美雄 の デザインエッセイ 〜OK Design〜

2008-07-24 アニリール・セルカン氏と話す I talked with Mr. Anilir Serkan. このエントリーを含むブックマーク

僕とは全く違う人種(と見えた)。だけど妙に懐かしい。


I talked with Mr. Anilir Serkan.



宇宙物理学者であり、エコ問題にも取り組んでいるアニリール・セルカン氏と話す機会があった。といっても、昨日、コイズミ産業とイタリア文化会館の共同企画「あかりのありかといのちのすみか展」(舌を噛みそう)の講演会に、同社の加藤健太郎君から誘われてのパーティでのことだが。(これには、同じコイズミ産業が始めた吉野事務局長のNPO「バード・ハウス」外国人作品展とその紹介もあった)


会って、知れば知るほど身近かにに感ずるようになってきたが、容貌に留まらず、講演中の身振り手振りや着るもののセンスから、あのパンツェッタ・ジェラーロモ(名前再確認)を思い出してしまった。

このことは本人に遠慮なく言ったので、隠すことではないが、それに加えて思いの外、達者な日本語で、宇宙と地球の問題であり、人間の問題であり、地域の問題であり、住居の問題であるような、あらゆることを包含したエコロジー問題を早口で語られて、頭が混乱した。


これらをまとめる概念として、彼は「インフラフリー」という言葉を生み出した。「インフラ」が何を指すかも含めて理解がなかなか厄介なテーマであるのに、身振り手振り、漫談口調で語りかけるので、考えが集中出来ない。言葉の誤用ではないが、概念を含め、いくつかのことは、もう少し順序を追って説明して欲しかった。これは画像にも言える。

ポイントは、ゴミを完全に資源化するサイクルシステムの構築、と読めた。

これ自体は素晴らしいことで、各家庭一戸でも、排熱、ゴミを自家消化し、きれいな水や酸素に変えるユニットを持つように設計して行くとしている。しかし、エネルギー転換時にまた浪費があるのではないか、というあたりにまで言及してくれたとは理解していない。


彼の経歴を見るともっと分け判らなくなる。

ドイツ生まれのトルコ人。IIT(アメリカ)で学び、プリンストン大の講師が出発点か。オリンピックのスキー代表で金メダルNASAで訓練を受けていて、現在トルコの宇宙飛行士予定者第意1号。東大建築学を学び、現在は同大学院助教授ナポリ大学,ローマ大学などの客員教授も務め世界中を飛び廻っている。35才位。現在は東京に住み、9ヶ国語を話せるとか。

テーマが宇宙開発、環境開発で、論理・理想が優先のため、僕らにはしっかりフォロー出来ない分、超天才か詐欺師かに振れてしまう(失礼)、そういう人物だ。


こういう見かた自体が僕らの、ちょっといい加減な価値判断傾向を表わしているのかも知れない。

「表現されたもの、皮膚感覚で判断するもの、そういうものを経験的なデータでしか操作できないんですよ、僕たちは。あなたは建築をやっていると言っても科学者だから、データと論理構造に関心があって、僕らのことには興味がないんですよね?」という質問に対しては、彼は「それは『無』として考えている」というような禅問答的な答えがあった。

直感的には、正鵠をついた質問になっていたかと思い、また、彼が正確に受け止めていないのではと思い、対話がストップしてしまった。

「『無』ねぇ…」。

そこには「無」にも意味を認めるとの思いもあるのかも知れない。

また、そういう当方の切り出しも、話のメリハリをつけたいからで、感覚判断と言ったって、実際にはデータや推論の信頼性を無視しているわけではない。

このことについては、もう少し突っ込んだ問い返しをしたかったのだが、人で一杯のパーティ会場を考慮すると、これには相当の集中力が必要で無理。


それにしても、こういうことを平気で言う方もなんだが、これを聞いて、怒るでもなく、今日は若い人相手、学会発表ではないから楽しくやりたかったと、くったくが無い。

話しているうちに、ミラノで近くに住んでいた自動車修理工で、ろくに何にも出来ないのに愛想ばかり良かったあの男にも似ているな、などと想い出し、やっぱラテン人だなあと思えきて、妙に親しみが湧いて来た。セルカンさん、無礼をお許し下さい。