それでも松井秀喜は移籍する!ワールドシリーズ男の微妙な立場。

スポーツ・インテリジェンス原論

それでも松井秀喜は移籍する!
ワールドシリーズ男の微妙な立場。

生島淳 = 文
text by Jun Ikushima
photograph by Getty Images

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松井秀喜

 ヤンキースのユニフォームを着て、ワールドシリーズでとてつもない活躍をするのは、「伝説」として名を残すということである。地方都市の球団でMVPを取るのとは、ワケが違う。

 1977年に3打席連続本塁打を放ち、「ミスター・オクトーバー」と呼ばれたレジー・ジャクソンと、1956年のワールドシリーズで完全試合を達成したドン・ラーセンは、伝説上の“横綱”だ。

 松井の1試合6打点の活躍は、“大関”に相当すると思う。

 しかし、伝説として生きるジャクソンとラーセンには、ヤンキースの松井を愛するファンにとっては不吉な共通点がある。

 ふたりとも、ヤンキースとは別のユニフォームを着て引退したのだ。

 じゃあ、松井は――。来季から別のユニフォームを着る可能性は今も高いままだ。

ワールドシリーズMVP獲得で移籍の可能性は減ったのか?

 前々回のコラムで、私は松井秀喜のヤンキース残留の可能性は低い、と書いた。今もその考えは基本的に変わっていないが、さすがに超弩級の活躍によって風向きは少し変わった。

 ニューヨークのメディアは競争が激しく、空気を読むのに敏感だ。『デイリー・ニューズ』のコラムニスト、ジョン・ハーパーは「MVPの松井を失うのはヤンキースの過ち」と早くも松井残留キャンペーンを始動。

 高級紙『ニューヨーク・タイムズ』では、「ヤンキースはスーパースターだけではなく、信頼できるベテランが支えてきたチームだ。そう、松井秀喜のように」と大絶賛し、来季以降の契約更新を促す論調になっている。

「アンチ・エイジング」が急務であるヤンキースの裏事情。

 この問題を考えるにあたり、なぜ松井はヤンキース残留の可能性が低かったのかを考える必要がある。

 問題の核心は、ヤンキースが「アンチ・エイジング」を図る必要に迫られているからだ。優勝を決めた第6戦のラインナップを年齢付きで見てみよう。

守備位置選手年齢
(遊) ジーター35
(左) デーモン36
(一) テシェイラ29
(三) ロドリゲス34
(DH) 松井35
(捕) ポサダ38
(二) カノー27
(右) スウィッシャー 28
(中) ガードナー26

 このチーム、かなり高齢化が進んでいるのが分かるだろう。これでよく勝ったと思うが、ベテランたちは峠を越しているとはいえ、只者ではないことをワールドシリーズで証明した(特にジーター)。

 いま絶頂期にあると言えるのは、テシェイラ、カノーの両選手だけで、他の球団だったらベテランはトレードに出されるところだ。

 しかしジーター、ポサダに関しては1990年代からの生え抜きで、絶対にトレードには出せない。これにクローザーのマリアーノ・リベラ(11月29日で40歳を迎える)を加えた3人は、人事異動的には「アンタッチャブル」だ。彼らが消えたら、ヤンキースの文化は崩壊する。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  キャッシュマンGMも来季の若返りを宣言。

(更新日:2009年11月6日)

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筆者プロフィール

生島淳

生島淳

1967年気仙沼生まれ。早大卒。NBAやMLBなど海外ものから、国内のラグビー、駅伝、野球など、全ジャンルでスポーツを追うジャーナリスト。小林信彦とD・ハルバースタムを愛する米国大統領マニアにして、カーリングが趣味(最近は歌舞伎に夢中)。
著書に『慶応ラグビー「百年の歓喜」』(文藝春秋)、『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)、『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)など。『BSベストスポーツ』(NHK・BS1毎週日曜21:10~)、『生島淳のアクティブスタイル』(TBSラジオ毎週日曜正午~)にも出演中。

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