2011年4月をめどに民間へ売却されることになった北九州市立若松病院(若松区)。背景には、全国的な医師不足による病院経営の悪化がある。早期の経営改善を迫られた市は18日の会見で「地域医療を維持し、安定的に医師が確保できる相手に売却する」と理解を求めた。しかし医療機能がどの程度維持されるか明確ではなく、住民からは不安の声も上がっている。
若松病院は若松区唯一の総合病院だが、内科の常勤医6人が昨年退職し、以来、内科の入院診療ができなくなった。入院患者だけでなく外来患者も大幅に減少。市立4病院の会計を合わせた08年度病院事業会計の赤字額は26億6000万円に上り、11億7600万円の資金不足となった。
市病院局の南本久精局長は会見で「会社で言えば倒産状態。半年後、1、2年後に状況が改善できる見込みはなく、(民間への売却を)決断すべきだと判断した」と説明。運営を民間などに委ねる指定管理者制度を利用しなかったことについては「(制度を導入した)門司病院は市内唯一の結核病床があり、市が経営に関与する必要があった。若松病院の場合、負担を抱えるよりも、売却代金を債務返済に充てて事業会計の早期改善を図ることを選んだ」とした。
市は今後、医療関係者や地元関係者でつくる検討会を設置。医療機能の在り方や売却先などを検討する。
これに対し「市の決定に手を挙げて喜ぶ住民はいない」と言うのは、若松区自治総連合会の大庭卓朗会長。行方を見守りながらも「住民の要望を市にぶつけていきたい」と訴えた。【松田栄二郎】
〔北九州版〕
毎日新聞 2009年11月19日 地方版