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【政治】

日本有事の米作戦判明 『統合困難』一因か

2009年11月19日 朝刊

 日本が武力侵攻される事態を想定して、米軍が沖縄の米空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)に航空機約八十機を追加し、また米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)に三百機のヘリコプターを追加配備する有事作戦計画を立てていることが分かった。普天間飛行場の移設問題をめぐる日米の閣僚級作業部会で、米側は統合案をあらためて拒否したが、その軍事的な背景が明らかになった。

 日米軍事筋によると、米空軍は日本有事に対応して戦力増強する計画を立案。嘉手納基地へは米本土からF16戦闘機、空中警戒管制機(AWACS)、空中給油機、輸送機など約八十機を追加配備する。

 現在、嘉手納基地には第十八航空団のF15戦闘機五十四機をはじめ、米海軍のP3C哨戒機など約百機が常駐するため、有事には倍増することになる。

 また米海兵隊は有事の際、普天間飛行場に兵士を空輸する大型ヘリコプターなど三百機を追加配備する。現在、同基地のヘリは約五十機のため、実に七倍に増える。

 空軍と比べ追加機数が多いのは「機体が損傷したり、故障しても修理せず、別の機体を使うとの説明を受けた」(同筋)としている。

 これらを嘉手納基地一カ所にまとめると、基地は航空機やヘリであふれかえる。米側は「離着陸時、戦闘機の最低速度とヘリの最高速度はともに百二十ノット(約二百二十キロ)と同じなので同居すると運用に支障が出る。沖縄にはふたつの航空基地が必要だ」と説明したという。

 米軍が想定した有事は、米軍と戦力が互角だった冷戦時の極東ソ連軍による武力攻撃事態だ。台湾有事や朝鮮半島有事でも、追加配備の重要性は変わらないとされる。

 そうした有事が起きる確度は極めて低いが、米軍は有事を主軸に基地使用を計画するという。

◆普天間の航空戦力海外移転協議も必要

<解説> 日本有事の際の嘉手納基地、普天間飛行場に航空機を追加配備する米軍の計画が判明した。嘉手納基地には約八十機、普天間飛行場には約三百機もの戦闘機やヘリコプターが米本土から押し寄せる。

 三千七百メートルの滑走路が二本あり、平時の運用なら普天間飛行場をのみ込む余地がある嘉手納基地も窮屈になる。普天間移設問題で岡田克也外相が主張する嘉手納統合案は、実現困難なようにみえる。

 だが、嘉手納配備の航空機の数は一定ではない。ベトナム戦争最中の一九七〇年にはB52爆撃機の部隊が撤退。七九年からF15戦闘機の配備が始まったが、ソ連崩壊後の九二年、このうち十八機が撤退した。

 今年四月、米軍は防衛省に青森・三沢基地の戦闘機の全面撤退と嘉手納基地の戦闘機を一部撤退させる案を非公式に提示した。具体的な検討には至らなかったが、現在の基地の姿が永遠のものではないことを裏付けた。

 嘉手納基地への配備と撤退を繰り返す最新鋭のステルス戦闘機F22は、一個飛行隊で嘉手納に常駐するF15の飛行隊二個分をはるかに上回る戦力だ。

 米空軍は無人機導入に伴い、削減される戦闘機の穴を埋めるためF22を活用することや、在日米軍基地と米本土を行き来するローテーション配備も検討しているもようだ。

 普天間移設を含む米軍再編の日米協議は、二〇〇五年二月の日米安全保障協議委員会で「在日米軍の兵力構成の見直し」に合意して始まった。航空戦力の海外移転を含め、日米であらゆる可能性について協議することはタブーではなく、中心テーマであるはずだ。 (編集委員・半田滋)

 

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