化学療法第2クール3週目の3月24日。朝は平熱。白血球の数が回復し、隔離状態から解放された。昼からいよいよ両脚歩行のリハビリが始まることになった。車椅子がなくても歩けるようになれば、週末に初めての一時帰宅が実現するのだ。
しかし、昼前から寒気を覚え、体温は39.5度に。リハビリどころではなくなり、「なんでまた高熱なんだ」と担当医に当たり散らした。
平熱に戻ったのは3日後。次の週は抗生剤の点滴を続けて休養に当てて、第3クール開始は1週間先延ばしになった。
そのころ、がんで4年前に48歳で亡くなった元上司の奥様から激励のメールが届いた。元上司も入院中、激しく看護師を怒ったことがあり、一時帰宅できなくなった時はがっかりしていたという。
メールには「元気で強い人が尊いわけでは決してないと思います」とも書かれていた。弱くていいんだ、と自分に言い聞かせる。
3月30日、リハビリが始まる。松葉づえを手に、恐る恐る左脚に体重をかけた。痛くない。歩く分、それだけ筋肉がつく。「今度こそ」と週末の帰宅を目指して黙々と歩いた。<社会部・佐々木雅彦(44)>
毎日新聞 2009年11月17日 地方版