【09/07/25号】 2009年07月21日
もう目をそむけてはいられない!
「子ども危機」の真実に肉薄する
出産、子育て、教育など、わが国の子どもをめぐるインフラは、世界2位の経済大国とは思えないほど脆弱です。
2007年、奈良県で深夜に38歳の妊婦を搬送している救急車が、12病院から“たらい回し”に合い、その結果、死産となる痛ましい事件が起きました。医師の都市部偏在と、妊婦の高齢化など原因は複数考えられますが、このような状況では、とても安心して子どもを生むことはできません。
周産期医療に加え、小児科医の不足も、子育て世代には深刻な問題です。小児患者は、夜間救急の頻度が高い上、症状を説明できないなど手間暇がかかるわりに、入院が少なかったり、薬剤の使用料が少なかったりで、高齢者の医療に比べ極端に低い。
手間暇ばかりかかるのに採算性が悪いということで、小児科医のなり手は減るばかりです。
全国の都市部では、共働き世帯が保育園不足で悲鳴を上げています。保育料が安く、園庭など施設も充実した「認可保育園」は抽選方式で、順番待ち。抽選に外れれば、雑居ビルの一室などにある認可外保育園にわが子を預けざるをえない。
政府は、規制緩和によって保育園の新規参入を進めていますが、新旧勢力の対立などがあって、保育園の拡充はなかなか進みません。これでは少子化を食い止めることなど不可能です。
教育はおろか、食事や医療など生活に必須なものさえ、満たされていない「子どもの貧困」という問題もあります。日本では実に、子どもの7人に1人が「貧困」状態にあると言います。
厚生労働省の調査によれば、母子家庭のおよそ6.5%、子どもの数にして3万人以上が、健康保険に加入していない、いわゆる「無保険」の状態です。週末にケガをしても病院には行かず、月曜日に学校の保健室に飛び込む。そんな小学生もいるのです。
学力低下、体力低下といった子ども自体の“変質”も心配です。東京の小学生の3人に1人が、「自分の国は、努力すれば報われる社会だ」とは感じていないという調査があります。
そうした意識の下では、学習意欲など高まるはずもありません。外遊びが減り、携帯ゲームなどでの1人遊びばかりになっているのも心配です。子どものときに一生懸命遊んだ経験がないと、大人になっても仕事に全力投球することができないと話す専門家もいます。
さらに、これから夏休みに入り、日本の子どもたちはネットや携帯を介した、さまざまな犯罪の罠にさらされることになります。SNS、学校裏サイト、プロフ、ホムペ、リアル、リク写……。
今や子ども同士のコミュニケーションは、親世代の預かり知らない世界で進んでいますが、そこには悪意の大人たちが、詐欺、性犯罪、恐喝などの罠を仕掛ける危険な場所でもあります。もはや親も「知らない」では済まされません。
現代の子どもたちを取り巻いているさまざまな「危険」を、親世代はしっかりと自覚し、何をすべきなのかを考えなければなりません。とにかく子どもたちには「この国に生まれてよかった」と思ってもらいたいものです。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)
Special Topics
バックナンバー
- 09/11/21号
- JALだけでない危機的状況! 「退職金・企業年金」は守れるのか (2009年11月16日)
- 09/11/14号
- 理想と現実のギャップは埋められるか? 日本の将来を占う「民主党経済」を総点検 (2009年11月09日)
- 09/11/07号
- 内部資料でわかった絶体絶命の窮地 「JAL国有化」に潜む罠を徹底検証! (2009年11月02日)
- 09/10/31号
- 18歳人口はピーク時の4割減! 大倒産時代に突入した「大学」を 多角的に浮き彫りにする (2009年10月26日)
- 09/10/24号
- ドラマだけでない“骨肉の争い” 「賢い相続・贈与」の完璧入門 (2009年10月19日)
- 09/10/17号
- 外貨投資の“罠”にはまるな! 投資家のための「為替入門」決定版 (2009年10月13日)
Pick Up
新着トピックス
- Close Up
- 新規参入は断固阻止!! 保育園業界に巣くう利権の闇
- イマドキ職場のギャップ解消法
- 「派閥はウザい」社員が激増中! それでも存在する派閥との上手な付き合い方
- トップコンサルタントが教える 強い企業の作り方
- 上司に求められるコミュニケーションとは?
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 確定拠出年金をどう方向づけるべきか
- inside
- タスクフォースの「置き土産」 JALにのしかかる10億円
- これが気になる!
- 我が家を簡単に高断熱住宅に変える、 「内窓」の省エネ効果
- inside
- GMがオペル売却を撤回も 見えない自力再建のシナリオ
- 人を動かす 説得コミュニケーションの原則
- 「とっさの一言」が相手を動かす! 臨機応変な対応ができるようになるコツ
- 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ
- JALだけでない危機的状況! 「退職金・企業年金」は守れるのか
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- JTの売上高4兆円が一瞬にして蒸発する 国際会計基準(IFRS)の憂鬱
- 本荘修二の実践講座! 社員を動かすウェブ
- P&G、PTC、応用地質に共通する “人をつなぐ戦略的な仕組み”の作り方
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- スペシャル対談 勝間和代、ジャック・アタリと「日本の未来」を語る
- 不況前の常識では勝ち残れない! 業界別「経営戦略実践講座」
- あり得ない想定が現実になった! 先を読む「中核戦略策定法」を初公開
- 金融市場異論百出
- 「強力な味方」が現れない ムダ洗い出しが抱える難題
- ネット時代のルール&マナー講座
- 「使うのが当たり前」だから怖い、会社でのインターネット利用に潜む危険を再検証。
Business information
アクセスランキング
- 1位
- 格差社会の中心で友愛を叫ぶ
- 「明日は新宿公園か、天国か――」 “救急車も呼んでもらえない建設現場”の悲惨
- 2位
- 現代人に突きつけられた「うつ」というメッセージを読み解く
- 将来のリスクばかり考えて「今」を楽しまないことの害悪 ――安定志向が「ウツ」を引き起こす
- 3位
- 経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
- JAL支援はまさに泥沼化の様相 1月にも再び「つなぎ融資」か?
- 4位
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- JTの売上高4兆円が一瞬にして蒸発する 国際会計基準(IFRS)の憂鬱
- 5位
- News&Analysis
- ビル・エモット 特別インタビュー 「オバマ政権の日本軽視は誤報! アジア重視の鳩山外交は米国の願い」
Recommend 話題の記事
- News&Analysis
- ビル・エモット 特別インタビュー 「オバマ政権の日本軽視は誤報! アジア重視の鳩山外交は米国の願い」
- 経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
- JAL支援はまさに泥沼化の様相 1月にも再び「つなぎ融資」か?
- 格差社会の中心で友愛を叫ぶ
- 「明日は新宿公園か、天国か――」 “救急車も呼んでもらえない建設現場”の悲惨
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- スペシャル対談 勝間和代、ジャック・アタリと「日本の未来」を語る
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- JTの売上高4兆円が一瞬にして蒸発する 国際会計基準(IFRS)の憂鬱
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本ではなぜか真剣に報道されない 米メディア再編急加速の一大事
- 週刊・上杉隆
- 事業仕分けの情報公開は、 健全な民主主義への一歩前進だ
- R&D1兆円企業の秘密 マイクロソフトを支える頭脳
- マイクロソフト基礎研究所“最強伝説”は今も健在か?
- News&Analysis
- 中国経済のV字回復で囁かれる 「人民元基軸通貨化」の真相
- 【参加無料】東証主催「2010年の投資新戦略」
- 下げ相場にもチャンスあり!2010年の投資戦略セミナーに先着100名様を無料ご招待
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
「ザイ」は年間12冊を予約購読すると、市販価格 7,800円→7,150円(税・送料込み)。今、6,600円!キャンペーン実施中!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。