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もう目をそむけてはいられない!
「子ども危機」の真実に肉薄する

週刊ダイヤモンド 出産、子育て、教育など、わが国の子どもをめぐるインフラは、世界2位の経済大国とは思えないほど脆弱です。

 2007年、奈良県で深夜に38歳の妊婦を搬送している救急車が、12病院から“たらい回し”に合い、その結果、死産となる痛ましい事件が起きました。医師の都市部偏在と、妊婦の高齢化など原因は複数考えられますが、このような状況では、とても安心して子どもを生むことはできません。

 周産期医療に加え、小児科医の不足も、子育て世代には深刻な問題です。小児患者は、夜間救急の頻度が高い上、症状を説明できないなど手間暇がかかるわりに、入院が少なかったり、薬剤の使用料が少なかったりで、高齢者の医療に比べ極端に低い。

 手間暇ばかりかかるのに採算性が悪いということで、小児科医のなり手は減るばかりです。

 全国の都市部では、共働き世帯が保育園不足で悲鳴を上げています。保育料が安く、園庭など施設も充実した「認可保育園」は抽選方式で、順番待ち。抽選に外れれば、雑居ビルの一室などにある認可外保育園にわが子を預けざるをえない。

 政府は、規制緩和によって保育園の新規参入を進めていますが、新旧勢力の対立などがあって、保育園の拡充はなかなか進みません。これでは少子化を食い止めることなど不可能です。

 教育はおろか、食事や医療など生活に必須なものさえ、満たされていない「子どもの貧困」という問題もあります。日本では実に、子どもの7人に1人が「貧困」状態にあると言います。

 厚生労働省の調査によれば、母子家庭のおよそ6.5%、子どもの数にして3万人以上が、健康保険に加入していない、いわゆる「無保険」の状態です。週末にケガをしても病院には行かず、月曜日に学校の保健室に飛び込む。そんな小学生もいるのです。

 学力低下、体力低下といった子ども自体の“変質”も心配です。東京の小学生の3人に1人が、「自分の国は、努力すれば報われる社会だ」とは感じていないという調査があります。

 そうした意識の下では、学習意欲など高まるはずもありません。外遊びが減り、携帯ゲームなどでの1人遊びばかりになっているのも心配です。子どものときに一生懸命遊んだ経験がないと、大人になっても仕事に全力投球することができないと話す専門家もいます。

 さらに、これから夏休みに入り、日本の子どもたちはネットや携帯を介した、さまざまな犯罪の罠にさらされることになります。SNS、学校裏サイト、プロフ、ホムペ、リアル、リク写……。

 今や子ども同士のコミュニケーションは、親世代の預かり知らない世界で進んでいますが、そこには悪意の大人たちが、詐欺、性犯罪、恐喝などの罠を仕掛ける危険な場所でもあります。もはや親も「知らない」では済まされません。

 現代の子どもたちを取り巻いているさまざまな「危険」を、親世代はしっかりと自覚し、何をすべきなのかを考えなければなりません。とにかく子どもたちには「この国に生まれてよかった」と思ってもらいたいものです。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)

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