福岡地裁(林秀文裁判長)は23日、女性に乱暴したとして、強制わいせつ致傷罪に問われた福岡県春日市の無職安武輝彦被告(25)に懲役2年6月(求刑懲役4年)の実刑を言い渡した。九州で初めてとなる性犯罪対象の裁判員裁判で、判決後に裁判員6人と補充裁判員2人が記者会見に応じ「重い事件内容だったので、精神的にきつかった」などと感想を述べた。
安武被告は起訴内容をほぼ認めており、裁判官と裁判員による評議での争点は量刑だった。弁護側は「懲役1年6月、執行猶予3年が妥当」と主張していた。
林裁判長は判決理由で、「強烈な暴行やしつような脅迫を加えたほか、人格を傷つけるわいせつ行為もしており、悪質」と指摘。言い渡しの後、「裁判員も裁判官も立ち直ることを強く願っています」と言葉を掛けた。
記者会見に応じた裁判員(男性5人、女性1人)と補充裁判員(女性2人)は20-60代の会社員や主婦、学生だった。
裁判員の50代男性は「いい勉強になった。(裁判員裁判で)世の中がいい方向に向くようにしてもらいたい」と述べた。補充裁判員の40代女性は「この経験を生かし、少しでも犯罪を減らせるよう協力したい」と語った。
このほか「被害者の実名をつい漏らしてしまうのではと怖くなり、覚えないようにした」「犯行内容を全部読み上げる必要はない」との指摘があり、性犯罪審理の問題点が浮き彫りになった。裁判員の構成については「男女半々がいい」「年代も偏らない方がいい」との意見が出た。
判決によると、安武被告は4月26日夜、福岡市の遊歩道で20代女性に馬乗りになって頭などに暴行を加え、体を触るわいせつな行為をした。
=2009/10/24付 西日本新聞朝刊=