女性に乱暴したとして、裁判員裁判対象の強制わいせつ致傷罪に問われた福岡県春日市の無職安武輝彦被告(25)の初公判が20日、福岡地裁(林秀文裁判長)であった。罪状認否で、安武被告は起訴内容をほぼ認めた。量刑が争点で、判決は23日午後。性犯罪を審理する裁判員裁判は九州では初めて。被害者を匿名にするなど二次被害防止に配慮しながら審理は進められた。
裁判員6人の構成は、男性5人、女性1人。裁判の冒頭、林裁判長は被害者のプライバシー保護のため、被害女性を「被害者」、事件現場を「福岡市の遊歩道」と呼んで審理を進めることを説明。安武被告に「被害者の名前や犯行場所を絶対に言わないように」と注意した。
検察側は冒頭陳述で、「嫌がる女性に無理やり性的関係を迫るなど、女性の人格を無視した身勝手な犯行」と指摘。一方、弁護側は「酒に酔って起こした偶発的な犯行。反省し、慰謝料も払っている」と訴えた。証拠調べでは、女性検事が被害女性の供述調書を朗読。女性のけがの状況を写した写真が裁判官と裁判員の手元のモニターに映されると、一部の裁判員は顔をしかめた。
午前にあった裁判員選任手続きの出席率は約88%で、6人の裁判員のほか、女性3人の補充裁判員が選ばれた。被害者の氏名や住所は伏せた上で事件現場の近くに住んだり勤めたりしていないかなど、被害者との接点の有無を質問票や面接で確認。検察側も被害女性に事前に候補者リストを見せて知人の名前がないかどうか確認したという。
起訴状によると、安武被告は4月26日夜、福岡市内の遊歩道で、20代の女性に馬乗りになって首を絞めるなど暴行した上、わいせつな行為をしたとされる。
=2009/10/21付 西日本新聞朝刊=