1回接種なのか、2回接種なのか。二転三転した印象のある新型インフルエンザの国産ワクチンの接種方針がようやく決まった。
13歳未満は2回接種、妊婦や持病のある人、高齢者も含め、成人は原則1回接種とし、免疫反応が不十分と思われる患者は2回接種も考慮する。ただし、中高校生だけは、当面2回とし、臨床試験の結果が出てから最終判断するという。
方針が定まらなければ、現場は予定が立てられず混乱するばかりだ。不確定な要素はあっても、「大人は1回接種」には一定の根拠もある。多くの人に早めに1回目を打てるよう、国も自治体も早急に接種態勢を整え、混乱を収めてほしい。
新型ワクチンの接種回数は、10月半ばに専門家会議が「13歳以上は原則1回」との意見をまとめた。しかし、「根拠が不十分」とする別の専門家の意見を参考に、政治判断で結論を先送りした経緯がある。
今回は、健康成人の2回目の接種データを専門家会議が検討。米国の子どもや妊婦のデータ、「10歳以上は1回接種」とする世界保健機関(WHO)の勧告なども参考とし、再度、「13歳以上は原則1回」との判断を示した。
妊婦や持病のある患者について、国内の新たなデータがあるわけではないが、前回、「根拠不十分」とした専門家もおおむね賛成した。長妻昭厚生労働相は、中高校生については方針決定を先送りしたが、それ以外は同意した。
「間違いのない判断を重視した」というが、結果的に態勢作りが遅れたことは否めない。今後は、新たなスケジュール作りと、その周知徹底を急がなくてはならない。
新型インフルエンザは子どもの感染が多く、重症化も目立つ。こうした状況を背景に厚労省は先週、子どもへの接種の前倒しを都道府県に要請した。
早期接種は重要だが、ワクチンが足りない現状で「子どもにも」と求められるだけでは、現場は困る。今回の接種方針の決定はプラスに働くはずだが、それだけでは問題解決に結びつかない。
ワクチン接種と感染者の診療が重なると、医療機関がパンクする。今回のワクチンは、幼児50人分に当たる10ミリリットル入りも供給されている。保健所での集団接種など、効果的な接種態勢も検討してほしい。
ワクチンは新型対策の切り札ではない、ということも忘れないようにしたい。重症化は予防できても、感染そのものは防げない。感染したら休む、こまめに手を洗うといった、基本動作は相変わらず大切だ。治療態勢の整備は言うまでもない。
毎日新聞 2009年11月13日 2時35分