フローニンゲンのヤンス監督が今季限りで退任
フローニンゲンの顔のような存在であったヤンス監督が、今季終了後にチームを去ることが決まった。今季いっぱいで契約が切れる同監督に対し、フローニンゲンの首脳陣は慰留に努めていたが、最終的にはヤンス監督の決心がリスペクトされた。
ゼネラル・ディレクターのナイラント氏は退任を惜しむ。
「フローニンゲンはヤンス監督と今後も仕事を続けるつもりだった。われわれはヤンス監督の下で最高の成功を収めていた。彼はクラブにとって単なる監督ではない。彼はクラブの象徴になったのだ。監督就任8年で終わりが訪れる。素晴らしい時で、それは今もなお。わたしは今シーズンが成功に満ちて終わることを希望し、期待している。そのことはヤンスにふさわしい」
2002−03シーズン開幕からフローニンゲンは不振に陥り、10月にローデウェーヘス監督をトップチームから外して、エメンの監督を務めていたヤンスを招き入れた。この時にヤンスに与えられたミッションは1部残留死守。ヤンスはチーム内外から押し寄せるプレッシャーをものともせず、持ち前のリラックスしたムードで1部残留に成功した。
その一方でヤンスは規律に厳しく、メールディンク、パウェルらをトップチームから追放し、リザーブチームへ落としたこともある。アヤックスへの移籍を強く主張し、練習をボイコットしたスアレスやシルバに対し、チーム首脳陣は移籍阻止に最後まで必死だったが、ヤンスは「フローニンゲンに対する気持ちがないなら、出て行ってもらって結構」とスター選手よりチーム愛を優先した。
05−06シーズンには5位になり、06−07シーズンには新スタジアムのユーロボルフが完成。UEFAカップ(現在のヨーロッパリーグ)にも出場し、フローニンゲンはビッグ3(アヤックス、PSV、フェイエノールト)、AZ、ヘーレンフェーンに次ぐ地位をオランダサッカー界で築いた。
「わたしは妻、3人の息子とも家で話し合った。わたしは“チャレンジ”を求めているわけではない。フローニンゲンというクラブで仕事をすることが、そもそもわたしにとってチャレンジなんだ。新しい“経験”を求めている。わたしたち一家は完全に新しい状況に身を置くことになる。つまり、もしかすると引越しするかもしれないし、新たな人々と付き合うことになるかもしれない。それは刺激的である。
わたしにはこれまでに2度、このような状況があった。1つ目は日本でサッカーをした時(1987−88シーズンにマツダ=サンフレッチェ広島の前身=に所属)。2つ目はドイツ語教師からフルタイムのサッカー指導者になった時だ。わたしは51歳。何が起こるか分からない世界へ自分をもう一度投じてみたい。
オファーに対し、わたしはオープンだ。これまでも興味のあるオファーはずっとあった。かつては外国で仕事をしてみたいと言ったことがある。もっとも重要なのは、サッカーに関して良い考えを持った人々と一緒に仕事ができる、そんなクラブへ行くこと。さらに、また居続けたいと思える国だ」
ヤンスは、マツダのオフト監督(当時)に誘われて、日本サッカーリーグ(JSL)でプレーした経験を持つ。最初の試合では気合いを入れてピッチに立ち、両手を上げてあいさつしようとしたが、あまりの観衆の少なさに「誰に向かって手を振ればいいんだろう」と戸惑ったという。それでもマツダの社宅での生活は刺激的なもので、買い物に行けば乳母車に乗せた子供に「かわいい」と日本人が群がり、妻は社宅のママさんバレーに興じた。
「日本人は練習熱心だ」とヤンスは振り返る。「しかし広島が本拠地だと遠征が多い上、多くの選手は仕事をしてから練習する。だから肝心の試合でプレーにキレがない。それでわたしは首脳陣に『もっと休息を取った方がいいのでは』とチームを代表して言ったんだ。でも、上の人に選手が何か言うのは日本ではタブーだった。わたしは怠け者と見なされ、干されてしまった」
こうして、ヤンスの日本滞在は1シーズンで終わりを告げた。自分の将来像についてヤンスはこう語ったことがある。
「わたしは米国、オーストラリア、日本といった生活レベルが高く、これからサッカーが栄える国で働きたい。わたしはトップチームの監督だけでなく、チームマネジメントもできる」
-Toru Nakata from Holland-
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[ スポーツナビ 2009年11月12日 20:58 ]
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