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【三重】近鉄四日市駅前に巨大パチンコ店計画 景観配慮などで対立2009年11月3日
地上10階建ての巨大パチンコ店の建設計画が、四日市市の近鉄四日市駅前で進められている。敷地面積は3000平方メートル以上で、2〜10階は約500台が入る無料駐車場の予定だ。工事の概要を知らせる看板を見るまで、計画を知らなかった地元の住民たちは困惑。慌ててパチンコ店側に要望書を出したが、双方の議論はかみ合っていない。 パチンコ店が出店を予定しているのは、駅の北口改札を出てすぐ東側。かつて三交ホールディングスが経営するボウリング場があったが、2007年1月に廃業した。土地を所有していた三交不動産によると、ビルの活用法が具体化せず、不況のあおりも受けてことし1月に売りに出した。購入したのが、パチンコ店経営のキング観光(桑名市)だった。 「まさかパチンコ店になるとは」。地元自治会の辻俊文会長ら住民は6月、ポストに投げ込まれた建設計画書などで初めて計画を知った。「最初は建設を阻止したい気持ち」(辻さん)で、自治会や商店街の振興組合などで対策協議会をつくったが、「土地の売買が成立した後では、もう反対は難しかった」。 7月には、1階にカフェやブティックを入れることや、駐車台数の削減などを文書で要望したが、10月上旬には「駅前通り側の緑の保全や色彩への配慮のみ」へ要望を絞り込んだ。協議会側は現実的に交渉できる内容にしたつもりだった。 しかし、キング観光の権田盛秀社長とはいまだに話し合いはできていない。市の中高層建物等の建築に係る紛争を防ぐ条例に基づき、10月下旬に開かれた2回目の住民説明会。権田社長は「店舗を2階にしろとか駐車台数を減らせとかは、経営の根幹にかかわる話で到底のめない」と喝破。「商店街にも相乗効果がある。パチンコへの偏見はやめてほしい」と出席者の口をつぐませた。 説明会後、協議会の林悦夫副会長は「7月の要望書と混同されてしまった。けんかするつもりはなかったのに」と食い違いを嘆いた。今後は同条例が定める通り、市にあっせんを求めるつもりだ。 四日市市の田中俊行市長は「法律上は問題はない」と強調する。都市計画法の定める商業地域で、遊技場の建設は可能。市景観条例には強制力がない。地域住民で計画を作り、市や県で承認されれば地区限定の規制を設けられるが、この場合は地権者の合意が大前提となる。 一方で、田中市長は「近鉄とは20年余り前の駅前開発で協力した仲。近鉄グループの三交不動産と、事前に話し合いができなかったことは残念」と話す。「今後は駅前通りを開発した施工管理者として、景観の配慮を主体的に求めていく」と言うのが精いっぱい。住民側の要望を同社に伝える“行司役”として努力するとも話している。 (小林迪子) <視線>住民説明会では「パチンコ店は絶対に許せない」と声を荒らげる人もいた。それに対し、キング観光の権田社長は「土地と建物で50億円の投資。50億払うというならすぐにでも撤退します」と述べた。売り言葉に買い言葉で、具体的な要望の話は進まなかった。 建設予定地の前で、心配そうな顔で工事の看板をのぞき込む人を見ると、「最善策はなんなのだろう」と考えさせられる。住民、キング観光、三交不動産、行政。四日市、そして三重の玄関口ともいえる場所の関係者として、意思の疎通を図る努力を惜しまないでほしい。
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