ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の相談件数増加を受け、盛岡市が6月、「配偶者暴力相談支援センター」を設置して4カ月が過ぎた。設置に合わせ、市は相談や保護、自立支援など総合的な対策の充実を図ったが、実際のセンターはどう動いているのか。センターを運営する「もりおか女性センター」で相談員のリーダーを務める高橋さんに聞いた。【狩野智彦】
--センター設置でどう変わったか
一番大きなことは、予算がついたことで、弁護士による法律相談が月1回と定期的にできるようになりました。DVを受けているという公的証明書の発行から、暴力を振るう配偶者から逃れるための公営住宅のあっせん、保護命令の書面提出まで一貫してできるようになりました。市役所や警察など関係機関の連携も密になり、権限と機能が増しました。
--相談を受ける態勢は
女性相談員2人が個室で午前10時から午後5時まで受けています。センターには開所日の6月下旬から9月末まで電話や面接が延べ560件ありました。そのうちDVは256件、面接は201件。原則は「間口を広く、敷居は低く」。何でも受けています。
--これまで印象的なケースは
小さい子どもがいて家計が苦しいのに、夫はパチンコなど自分が遊ぶことにはお金をかける。仕事をやめ、鬱(うつ)気味になり、大声で怒鳴ったり、壁をたたいたりし、さらに実家に子どもを連れて行ってしまった。女性はもう別れたいと思い、親権と離婚を求めて調停を始めました。法律相談をして弁護士にもついてもらった。女性は相談前、憔悴(しょうすい)した感じでしたが、「私もきちんと仕事をしたい」と前向きな言葉が出るようになりました。
--「見えないDV」は被害把握が難しい
身体的な暴力があると、誰でも「DVだ」と分かります。多くの女性が苦しむのは、周りになかなか分かってもらえず、自分自身も我慢しなきゃいけないんじゃないかって声を上げられないことなんです。
--センターの課題は
一番は経済的な問題です。例えば別居するアパートに住むにも、まとまったお金が必要です。でも、なかなか準備ができない。県には自立支援金があるのですが、これは一時保護になった人という条件があり、該当しない人もたくさんいる。もっと条件が緩和されて、自由に生活資金を補えるような基金があればいいですね。
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■人物略歴
都内の公立大を卒業後、県職員として福祉事務所に勤務。退職後、95年から県立婦人相談所の相談員。00年、もりおか女性センター設立を機に同センター転職。06年、同センターがNPO法人「参画プランニング・いわて」に管理・運営委託され、NPO法人職員に。同年、フェミニストカウンセラーの資格取得。盛岡市新田町在住。55歳。
毎日新聞 2009年11月3日 地方版