アフガニスタンとパキスタン国境地帯で医療や農業支援をする福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表、中村哲医師(63)が一時帰国し、10日に同市で記者会見した。アフガンの首都カブールで先月、国連職員の宿舎が襲撃され12人が死亡するなど、極度に悪化する治安情勢について「来春以降の見通しが全く立たず、一時撤収も検討せざるを得ない」と述べた。
中村医師によると、会は現在、8月に開通した全長約24キロの農業用水路の仕上げ工事と、水路の補修・維持に携わる住民約100世帯が入る「自立定着村」の整備を進めている。94年にパキスタン北西辺境州の州都ペシャワルに開設した拠点病院「PMS病院」は7月、現地職員らで作るNGOに譲渡したが、同州は既に内戦状態で、職員も患者も通えない状況だという。
中村医師は「(現地入りの手段としている)国連機が撤退して私自身が行けなくなる前に、事業が分解しないような態勢を作ること。それが恐らく我々の最後で最大の責任になる」と語った。
一方、政府が同日決定した4500億円規模のアフガン支援策については「農村支援の姿勢を打ち出したのは前向きなこと」と評価。ただ「(米欧の)軍事行動とセットと受け取られると良くない結果を生む」と述べ、非軍事の民生支援であることを明確に打ち出すよう求めた。【阿部周一、写真も】
2009年11月11日