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2009年10月06日

コスモス


葬儀を終え、斎場に向かう車の中で、
ぼんやりと私は窓の外を見ていました。

天気予報はあまり芳しくなかったのですがよく晴れています。

そういえば祖母はいわゆる「晴れ女」でした。
何か肝心なことのときにはいつも晴れている。
人生が終わるその最後のイベントの時にまで力を発揮していました。

おかげで持ってきた傘はただ荷物となってしまいました。

通夜から葬儀まで、
まるでベルトコンベアーに乗せられているように粛々と進行していきました。
今の時代はそうなんだよな。
ほとんど何もやることがない。

私は受付を手伝い、また会葬者に供物を差し上げる係りになって
ずっと立っていたのですが、室内とて寒くもなく、
葬儀社の人がずっと後ろに立っていて、
会葬者の人が多く用意が足りなくなって不安になってもすぐに補充してくれる。
まあ、ただ居るだけの存在でした。

葬式というのは、元来は忙しいもので、バタバタとあれやこれやと走り回って、
そのせいで寂しさを一時忘れるという効用もあったはずなのですがこれでは…。

しかしありがたいことでもあります。みんな疲れていましたから。

おかげで通夜も葬式も時間がある程度確保でき、
久しぶりに会う親戚縁者とも旧交を温めることが出来ました。

日本中に散らばってしまった従兄弟たちに会うことなど最近はほとんどなくなって
ほぼ年賀状だけの付き合いだけになっていましたから。

 「仏さんが人を会わせてくれるんだなあ」

誰かがそんなことを言っていました。

人が亡くならないとなかなか会うことがない、
というのも寂しいことではあるのですが、これもまた功徳です。

そうして、手間のかからない葬儀にせよ、なんとなく疲れます。
そして私は泣いてばかりいる母親がどうしても気になります。

母親ももう孫が大きい年齢で、ここ数年は「老々介護」のサンプルみたいでしたが、
それも一種の心の張りのようなものを生んでいたようにも思えます。

支えがなくなったように思いはしないだろうか。

そんなことをぼんやりと考えながら、窓の外に流れる景色を見ていました。 

 「コスモスが咲いてるよ。きれいだね」

妻がそう言いました。
車は川沿いを走っていました。

この時期にコスモスはもう遅いはずなのですが、
今年はいろいろ気候もややこしかったせいか満開でした。

先頭を走る車に乗っているばあちゃんも見ているでしょうか。

ばあちゃんは花が大好きでした。
自分でも育てていましたし、とにかく野に咲く花も全て愛していました。
まだ冬枯れの季節には少し間があります。
この時期に逝った事もまた功徳だったのでしょう。
花にも送られて祖母は旅立ちました。

今は火葬もあっという間です。
祖父が逝った30年前はずいぶんと時間がかかったものでしたが。
感傷を覚える時間すらない。

骨壷に納められ小さくなってしまった祖母を見つめながら、
後を継ぐものたちは、また様々に思いが沸き起こるのでした。


ばあちゃんさあ。

時々は花を供えに来るからな。
僕らは忘れることはないから、ばあちゃんも忘れないでな。
ほんとにありがとう。


風に揺れるコスモスとともに秋の空に還った祖母。
ずっとこれからも私たちを見ていてくれるんでしょう。
心配ばかりしながら。

日常の暮らしに戻っている私たちですが、
今になってまた寂しさがぐっと襲ってきます。

母に電話をしてみましょうかね…。


>>小さなことから始めよう

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コスモスへのコメント

■ 豆乳

こんにちわ

台風が近づいてきてるね

言われてみれば親戚付き合いが薄くなって会うとすれば結婚式かお葬式だよね

子供が大きくなるに連れ実家に帰る回数も減り親戚の様子も年賀状で近況を知るって感じだわ

秋は過ごしやすい季節だけどもの悲しいね~

Posted by 豆乳 at 2009年10月06日 14:14

■ daidaidaidai

http://to1ho1.hamazo.tv/ >豆乳ちゃん

実は、ばーちゃん亡くなって2年になります。

でも、いまだにこの時期になると思い出すんですね。

コスモスを見るとね。

Posted by daidaidaidai at 2009年10月06日 15:27
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