パークタウン西武庫
ワイヤーソーによる給水塔の解体
大阪本店 工事事務所 翁長 昌章
はじめに

 18−パークタウン西武庫(その3)基盤整備工事は、尼崎市武庫之荘の旧日本住宅公団(現 都市再生機構)が昭和37年に供用を始めた西武庫団地(72棟)の建て替え整備事業の第3期工事(最終工区)にあたり、団地32棟を解体し跡地の整備を行う工事です。本号では、西武庫団地の付属施設である給水塔(写真−1)の解体工事について紹介します。

写真−1 給水塔全景
写真−1 給水塔全景
図−1 切断割付図
図−1 切断割付図
施工概要

 解体する給水塔は地上から37mの高さがあり、解体作業ヤードが狭隘で民家に近接していました。そのため安全はもちろんのこと、環境(粉塵・振動・騒音)に配慮した施工が求められたため、塔上部からワイヤーソーで切断することによりダンプトラックにて運搬できる大きさ(50ブロック)に分割し(図−1)、クレーンにて解体を行う工法を採用しました。なお、ワイヤーソーを用いた解体は地上3mまでで、残りの部分は圧砕機で撤去を行いました。

施工手順

 (1)準備工:作業ヤードの確保のため、樹木の伐採、構造物(玉石縁石・パイプ柵)の撤去および外周万能塀を設置しました。
 (2)足場組み立て:給水塔全面に作業足場を設置し、周囲に防音パネルを取り付け騒音・粉塵対策を行いました(写真−2、図−2)。
 (3)給水塔切断工:給水塔は、クレーン能力を考慮して最大6t/個のブロックになるよう切断し、クレーンにて直接ダンプトラックに積み込み、中間処理施設に運搬しました。これにより現場での小割作業が不要になり、騒音・振動・粉塵の発生を抑制できました。

写真−2 足場および防音パネル設置
写真−2 足場および防音パネル設置
図−2 足場組み立て図
図−2 足場組み立て図
ワイヤーソーによる給水塔切断の手順

《STEP1》 縦切断用削孔
ワイヤーソーで縦切断するためのワイヤ−通し孔をコアボーリングにて削孔。
《STEP2》 縦切断(写真−3)
ワイヤーソーで縦方向に切断(2ヵ所)。
《STEP3》 吊りワイヤー孔の削孔
コアボーリングにて吊りワイヤー孔を削孔し、吊りワイヤーをセット。
*吊りワイヤーには、コンクリートとの接触部分の切断を防止するためにスリングチェーンを使用。なお、古い構造物のため、吊穴部のコンクリート強度を事前に確認。
《STEP4》 横切断・搬出(写真−4、5)
ワイヤーソーにて横方向に切断し、100tクレーンにてダンプトラックに積み込み中間処理施設へ搬出。
 上記の手順にて上部から順次解体を行い、地上から3m(万能塀の高さ)までの部分は全てワイヤーソーにて解体しました(写真−6)。最後に地上部(H=3.0m)を圧砕機により解体し整地を行いました(写真−7)。

写真−3 ワイヤーソー切断状況(縦切断)
写真−3 ワイヤーソー切断状況(縦切断)
写真−4 ワイヤーソー切断状況(横切断)
写真−4 ワイヤーソー切断状況(横切断)
写真−5 切断ブロック搬出状況
写真−5 切断ブロック搬出状況
写真−6 ワイヤーソー切断完了
写真−6 ワイヤーソー切断完了
写真−7 解体・整地・防災完了
写真−7 解体・整地・防災完了
おわりに

 給水塔解体工事を含む当工事は、平成20年8月に竣工しました。給水塔は、西武庫団地周辺の方々にとってシンボリックな建物だったようで、解体作業中に、地域の方々より「残念だ」・「寂しくなるね」など声をかけていただくことが度々ありました。それだけ注目される工事であったことが、より一層安全面・環境面に配慮した施工の重要性を感じました。
 今後もこのような団地の再生事業が数多く行われると思いますので、この事例が参考になれば幸いです。

  ―――――工事概要―――――
工事名称
18-パークタウン西武庫(その3)基盤整備工事
工事場所
兵庫県尼崎市武庫豊町地先
発注
独立行政法人 都市再生機構西日本支社
施工
(株)鴻池組
工期
平成19年2月〜平成20年8月
工事内容
建築物等除却工事
 鉄筋コンクリート造 4階建 8棟 5階建 24棟(計924戸)
 給水塔 1ヵ所(地上高H=36.95m)
 集会所 1棟
 その他付属施設
整地・防災工事 一式
排水道路工事 一式
造園工事 一式
 
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