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株式ニュース



アナリストの視点(国内株式):不況が味方! 冬に向け沸騰――鍋スープ市場のホットな中身

2009/11/02 10:13

 早いもので、今年も11月入り。朝晩は寒さが感じられ、鍋ものが恋しい季節が到来した。リーマン・ショックから1年余り、大手企業の一部には業績上方修正の動きがみられるものの、庶民の懐具合は厳しいまま。こうした不況の時期だからこそ、大きく売上高を伸ばしている商品がある。「鍋スープ」だ。好みの野菜や肉などを入れて煮込むだけで比較的手ごろに、家族みんなでさまざまな味の鍋料理を味わうことができる。この「鍋スープ」が“100年に一度”とさえ言われる不況の中で急成長をみせている。

 鍋スープ市場で18%(2008年度実績)とトップシェアを誇る調味料メーカーのダイショー <2816> によると「鍋スープが現在のようなストレートパウチパックの形式で販売され始めたのは今から20年ほど前。バブル崩壊とほぼ同時期においしさとヘルシーさで“もつ鍋”がブームとなり、これと連動して1993年前後にもつ鍋スープがヒット商品となった」(広報室)という。

 その後、IT(情報技術)バブルの崩壊に前後して、再び不況に見舞われた2000年代前半には、フジテレビの「発掘!あるある大事典」に代表される、健康生活情報バラエティー番組の影響や、折からの“韓流ブーム”も手伝って、キムチが日本でも国民の日常食として完全に定着して「キムチ鍋」が大きなブームとなった。

 そして今回、昨年秋以降のリーマン・ショックの不況下ではハウス食品 <2810> を中心に展開された「カレー鍋スープ」の登場で“第3次ブーム”の様相となっている。ハウス食品では「2008年8月にカレー鍋スープを発売して、昨シーズンは8億円の売上を確保した。カレー鍋スープ全体では19億円程度と聞いている。今シーズンはこれが30億円に拡大するとみられており、当社としても12億円を目標としている」(広報部)としている。

 今年はこの「カレー鍋スープ」に続く“新しい味”としてカゴメ <2811> の「トマト鍋スープ」やダイショーの「チーズ鍋スープ」が早くも好調な出足をみせており、次のけん引役としての期待が高まっている。

 業界関係者によると、この鍋スープの市場規模は、2007年度の190億円から2008年度には230億円へと20%超の高い伸びをみせた。この背景には、カレー鍋スープの登場だけではなく、不況による家庭回帰、内食化傾向の大きな流れがあることは確かだ。シーズンを迎えた2009年度も257億円(前年度比12%増)と引き続き2ケタの伸びが見込まれている。

 食品業界の中でも、年率2ケタ成長を継続する商品カテゴリーは極めてまれで、味の素 <2802> 、キッコーマン <2801> 、日本水産 <1332> 、永谷園 <2899> 、エバラ食品工業 <2819> 、非上場の中埜酢店など有力企業の参入が相次いでいる。

(冨田 康夫)

提供:モーニングスター社

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