このページの本文へ
ここから本文です

日本に棲む異能人  “宇宙エレベーター”をデザインしたトルコ初の宇宙飛行士候補

2007年2月1日

(文:稲泉連、撮影:鈴木愛子)

東京大学大学院で建築学専攻助手を務めるアニリール・セルカン博士は、欧州の寄宿学校で事件を起こして退学になったという過去をもつ。そんな彼は、いかにして「宇宙エレベーター」を設計し、トルコ人として初のNASA(米航空宇宙局)の宇宙飛行士候補に選ばれる科学者になったのか。人生の転機は、退学になった15歳のときに仲間と作った“本物”のタイムマシンだった――。そんな経験をセルカン博士は昨年、書籍『タイムマシン』(弊社刊)にまとめた。最年少大宅賞作家の稲泉連氏が、博士の素顔に迫る。

建築の新領域「インフラフリー住宅」を目指して

「研究発表や講演をしているとき以外は、科学者に見られたことが一度もないんです。バーテンダーに間違えられることはあってもね」

そう言って笑うアニリール・セルカン氏は、東京大学大学院で建築学を専攻するドイツ生まれのトルコ人だ。現在の研究テーマは「インフラフリー住宅」。上下水道や電気などのインフラに接続することなく、一つの独立したシステムとしての住宅のあり方を探っている。

「建築の世界には新しい研究課題がなくなりつつあります。でも、その中でまだ残されている領域がインフラフリー。建物を造るときは水道や電源につなげなければならないわけですが、そうしたインフラから自由になることで住宅の可能性がとても広がるんです。例えば水について考えただけでも、少量の水を循環させる仕組みが一戸の建物に組み込まれていたらどうでしょうか。地震でインフラが切れても生きていけるような仮設住宅。砂漠の真ん中でも生活できる住宅。インフラフリーを出発点に発想をどんどん自由にすれば、LOHASな未来だって見えてくるはずです」

セルカン氏。バーテンダーに見られてしまうことも

1973年生まれのセルカン氏が、初めて日本に来たのは1998年。20歳までスキープレイヤーとしても活躍していた彼は、トルコチームのコーチとして長野オリンピックに参加した。

「日本は科学をすごく大切にしている、と思ったことが東京大学に来た理由でした。任天堂やソニー、東芝、パナソニック……。私が子供の頃にすごいと思っていたのものって、何でも日本じゃん、って。技術的な成功を遂げた国だという印象が強くて、どうしても日本で博士号を取りたいと考えるようになったんです」

(全 4 ページ中 1 ページ目を表示)

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

記事検索 オプション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る