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取材ノート09:医師不足 研修医の流出阻止に懸命 /鹿児島

 ◇14病院が連携し学生にPR

 県内で研修を受ける“医師の卵”が減っている。04年から臨床研修制度が変わり、県外に出る鹿児島大卒業生が増えたためだ。研修医が減ると、既に慢性的な医師不足に悩む地域医療が将来、さらに危機的状況に陥るおそれがある。そこで病院がタッグを組んで学生への働き掛けを強めたり、県医師会が基金制度を設けるなど、研修医の流出阻止に懸命だ。【福岡静哉】

 10月17日、鹿児島市の鹿大医学部。県内14の臨床研修病院がブースを構え、医師らが並んだ。「小児科の研修内容を知りたい」。医学部生が尋ねると、研修医が「いつでも見学に来て」と応じ、パンフレットを手に詳しい説明を始めた。

 臨床研修を実施する全14病院が5月に発足させた「県初期臨床研修連絡協議会」が初めて企画した説明会。来夏から研修先選びが本格化する5年を中心に60人が集まった。「循環器系に強い」「症例数が多く幅広く学べる」。各ブースでPRの言葉が飛び交う。

 5年の毛利翔悟さん(22)は「多くの病院の医師や研修医と話せて、具体的なイメージができた」と話す。

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 協議会発足は、県内の研修医激減が背景にある。04年の制度改定で研修先を選びやすくなり、症例が多い▽最先端医療▽研修プログラムの充実--などを理由に、鹿大医学部(定員95人)卒業生の一部が福岡など都市部に流出。04年に105人いた研修医は09年は54人と半減した。

 人口10万人あたり医師数(06年調査)で、鹿児島市以外はすべて全国平均未満と、県内の医師不足は深刻だ。

 県立北薩病院(伊佐市)の常勤医は4年前から5人減り、14人。鹿大からの非常勤医師5人が穴埋めする。脳出血など緊急手術が多い脳神経外科は昨秋に医師不在となり、熊本県人吉市の人吉総合病院に搬送している。南裕介事務長は「宿直や夜間呼び出しもあり医師は疲弊している。今でもギリギリの状況」と訴える。

 地域医療を支えているのは鹿大病院からの派遣医だが、研修医の県外流出が増えれば、県の医療体制が崩壊しかねないという。

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 危機感を抱いた県医師会は4月、研修医らへの生活費支援を目的とした基金を設立。来春からの運用と年1億円の積み立てを目指し、9月中旬で約6800万円が集まったという。

 一方、協議会は鹿大での説明会を今後、毎年春と秋に開催する。県外の鹿児島出身者らにも働き掛けるため年3回、東京や福岡で開かれる合同説明会にも参加する。7月の東京での説明会では14人と面談したという。

 一連の取り組みが早くも奏功したのか、来年4月に始まる研修の県内希望者は83人と、4年ぶりに80人を超えた。例年、国家試験不合格で1~2割減るが、増加に転じることはほぼ確実。

 だが、協議会長を務める中村一彦・鹿児島医療センター名誉院長の表情は厳しい。「将来の鹿児島の医療を維持するには最低でも研修医が100人必要で、これからが正念場」。研修プログラムの充実や、より効果的な学生へのPRなど、課題は多いという。

毎日新聞 2009年11月8日 地方版

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