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普天間県民大会 確かな「総意」を示そう/「県外・国外」は新政権の義務2009年11月8日

 最初のSACO合意から14年が過ぎ、長引く米軍普天間飛行場移設問題に、日米両政府ばかりか、米軍内部にも焦りと限界が見えてきた。日米安保は、あまりに沖縄に基地を集中させ、犠牲を強い続けてきた。その付けが、いま日米同盟と安保の根幹を蝕(むしば)んでいる。
 沖縄にこれ以上過重な基地を負わせ続けるのはもはや限界であり、危険ですらある。
 きょう、普天間問題で「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」が宜野湾海浜公園で開かれる。一つの確かな県民意思が、そこで示される。鳩山由紀夫首相がいう「県民総意」と真剣に向き合う時だ。

米軍の中に焦りと限界
 鳩山首相は県内たらい回しをやめ、公約の義務を果たすべきだ。
 普天間問題のこじれは、米軍内部にも深刻な変化を生んでいる。米国政治に詳しい米ニュージャージー州在住の作家、冷泉彰彦さんは「沖縄問題、三つの非対称性」と題し、普天間、日米地位協定、在沖米軍の存在意義―の三つの問題で日米間に認識の格差=非対称性を指摘している。
 普天間問題は、米国にとって「米軍の抑止力」という政権交代に関係なく軍事外交方針として選択の余地のない「小さな実務的、テクニカルにすぎる問題」だが、日本にとっては「全国レベルの争点」「国論を二分しかねない大問題」との認識の格差があるという。
 だが、そんな小さな実務的・テクニカルな問題のこじれが在沖米軍の基礎訓練や演習への沖縄県民の強烈な反発や反対を招き、沖縄駐留の「危機」という深刻な問題に発展している。そのことがゲーツ米国防長官ら米高官の最近の対日強硬発言につながっている。
 駐留軍兵士の「士気」の低下を冷泉さんも強調している。1995年の少女乱暴事件で東京とワシントンから在沖米軍には綱紀粛正のプレッシャーが掛かり、その流れで普天間返還合意となった。
 だが、その後起きた米軍ヘリ沖国大墜落事故で、負傷した米兵らは同情どころか日本から訴追され、散々非難された。名護市の辺野古沖に移設が合意されても、今度は環境問題と選挙。既に駐留軍は「俺(おれ)たちの存在意義をこの島の人は認めていない」という違和感、「基地の外に出るのが怖い」「他の任地へ早く異動したい」との感情に苛(さいな)まれているという。
 地位協定問題は日本にとって犯罪米兵の裁判権など「治外法権」と不平等解消の問題だが、米側にとっては弁護士の立ち会いも認めず未決囚の拘置環境も劣悪な日本の司法制度から「部下の人権を守る」措置との非対称性がある。
 日米間の究極の非対称性は「在沖米軍基地廃止論」と「自主防衛論」のはざまで揺れる日本と、自主防衛論や非武装論を警戒し実務的な現状維持を強く望む米側との認識の落差にある。

県内強行は安保を危機に
 突き詰めると沖縄の米軍基地を廃止すれば自主防衛・核武装という「高コストで危険な安保」を背負わねばならないという「究極の選択」に怯(おび)え続けてきた戦後日本政治の限界が透けてくる。
 戦後政治の大半を支配した自民党政権が怯えた究極の選択を前に、鳩山新政権も萎縮(いしゅく)し判断停止に陥っている。
 だからこそ普天間の「県外・国外移転」を公約に掲げながら嘉手納統合案や辺野古沖という対米追従の自民路線の継承に傾いている。
 鳩山新政権の背信行為は、自民党政権ですら挑んだ北海道や岩国、厚木、横田、グアムなど県外・国外移転の調査・検討もなく「県内移設」を打ち出していることだ。
 戦後64年間、沖縄県民は絶えることのない米兵犯罪の犠牲、演習・爆音被害に耐え、救いを求めながら、十分すぎるほどに基地の重圧を背負い続けてきた。そんな沖縄の過重負担を軽減すると鳩山首相は約束したはずだ。
 普天間を県外に移設しても、在日米軍の専用施設の70%以上が沖縄には依然として残る。
 県内移設の強行は、県民の反軍・反基地感情を高め、日米安保の安定的運用すら困難を極める。
 県民は、安保の沖縄への過重依存や「米軍基地問題の沖縄封じ込め」という“差別”政策の転換を政権交代に期待した。鳩山首相に県民が求めているのは、首相自らが約束した普天間の県外・国外移設の実現という誠意だ。



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