イスラム原理主義組織ハマスの特殊部隊「カッサーム旅団」に密着しました。
イスラム原理主義組織ハマスの特殊部隊「カッサーム旅団」に密着し、その素顔に迫りました。
今なお報復の連鎖の中にあるパレスチナ・ガザでは、何が起こっているのか、その光と影、ガザの真実に迫った。
街灯に照らし出された夜の街は、パレスチナ暫定自治政府ガザ地区の映像。
住宅街の暗がりを狙うカメラ、するとそこには、銃を構えた人影があった。
1人、また1人と周囲を警戒しながら現れたのは、顔を隠した5人の武装集団だった。
カッサーム旅団の特殊部隊長は「わたしはカッサーム旅団に所属しているアブハミザーといいます」、「(役割は?)部隊長です」と話した。
額には、コーランの言葉とともに、カッサーム旅団の文字があった。
彼らは、いったい何者なのか。
カッサーム旅団の特殊部隊長は「われわれは、ハマスの組織の一部です」と話した。
カメラはこの日、同時に彼らの属するガザの支配組織ハマスのデモを映していた。
対イスラエル強硬路線を主張するイスラム原理主義組織ハマス。
10カ月余り前、イスラエルは、彼らに猛烈な攻撃を加えた。
空爆のあと、イスラエル軍は戦車などを先頭にガザに突入した。
しかし、圧倒的な戦力にもかかわらず、交戦で9人の戦死者を出したという。
実はこのとき、イスラエル軍と戦ったのが、カッサーム旅団のこうした兵士たちだったという。
カッサーム旅団の特殊部隊長は「カッサーム旅団は、ハマスのために作られた軍事組織です」と話した。
今でもイスラエル軍から抹殺の対象となっているというカッサーム旅団は、ハマスの中でもイスラエル攻撃の中心的存在として、これまでも名前が挙がっていた。
しかし、その中でも、彼らは特別な部隊だという。
訓練は、いつも夜間に行われる。
昼間は、上空にイスラエルの無人機の監視があるためだという。
しかし、映像に映った彼らが持つのは、個人の装備と旧式の自動小銃1丁だけ。
カッサーム旅団の特殊部隊長は「われわれの粗末な銃でも、神のおぼしめしでイスラエルの戦闘機や戦車にも立ち向かえるのです」と話した。
彼らは、強大なイスラエル軍とどう戦ったのか、その一端を示す映像が残っていた。
1つは、「狙撃」という戦術で、市街地に潜み、すきができたイスラエル兵に狙いを定め、銃撃する。
ハッチから身を乗り出した戦車兵らしき人物に狙撃する映像もあった。
実はこの狙撃、射撃位置がわからなければ、敵の部隊全体をくぎづけにできる効果があるとされている。
彼らの頭にある袋状の布は、上からかぶると、頭の輪郭が消える効果があり、狙撃にも使われる装備だという。
カッサーム旅団の特殊部隊長は「(イスラエルとの和平の可能性は?)それは、あり得ません。イスラエルには、流血と武力という言葉しか通じません」と話した。
力には力で応ずるというハマス・カッサーム旅団の兵士たち。イスラエルへの憎悪は強い。
彼らの存在とガザの将来について、放送大学の高橋和夫教授は「カッサーム旅団の存在自体が、イスラエルに対する脅威ですよね。したがって、イスラエルにとっては、経済的な社会的な打撃があるわけですよね。ですからイスラエルは、カッサーム旅団のメンバーの殺害を続けていますし、将来、ガザでイスラエルとカッサーム旅団がもう一度、大きな衝突を繰り返すと、その可能性は排除できませんよね」と話した。
イスラエルとパレスチナ、その暴力の連鎖の中で生まれたカッサーム旅団、彼らは今、この瞬間も戦っている。
(11/06 00:53)