最終更新: 2009/11/05 01:34

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パレスチナで生命線となっている国境に掘られた秘密トンネルに潜入取材しました。

報復の連鎖が続くパレスチナ。イスラエルによる武力制圧や境界封鎖の中で、国境に掘られた秘密トンネルが生命線となっています。
イスラエル軍の標的でもあるトンネルに潜入取材しました。

パレスチナ暫定自治政府、ガザ地区への出入りを監視するイスラエル側のエレツ検問所は、人けもまばら。
取材班を阻むようなゲートをくぐり、長い通路を歩く。
それが途切れると、突然、ガザ地区の荒涼とした風景が広がる。
1月、このガザ地区をイスラエルが攻撃し、その激しさは世界中を震撼(しんかん)させた。
市街地への攻撃とともに、イスラエル軍が破壊しようとしたもう1つの標的が、ガザ南部のラファにあるという。
その標的とは、トンネル。
穴からは、取材の時にも、大量の土砂が運び出されていた。
トンネルはまず、垂直な縦穴を掘り、一定の深さに達すると、今度は横穴を掘るという。
板で囲われた縦穴の深さは12メートルで、縦穴の底から伸びる横穴は狭い。
トンネルの大きさは、人がかがんで歩けるほどの大きさで、穴の直径は120cmほど。
硬そうな壁面には、手掘りの跡がうかがえる。
実はこうしたトンネルは、少なくとも1,000近くあるともいわれている。
現場責任者は「(イスラエルによる)ガザの封鎖を打ち破るためですよ」と話した。
日本の鹿児島・種子島ほどの面積の中に、140万人以上のパレスチナ住民が暮らすガザ。
イスラエルは、ここを壁で囲み、2006年からは検問所で、人や物資の出入りを厳しく制限し始めた。
この「ガザの封鎖」の目的は、対イスラエル強硬派組織「ハマス」への武器密輸などの阻止で、イスラエルは、最低限の物資の搬入を認めていると言い張る。
しかし、市民は「彼らは生活必需品の持ち込みは許可しない。(食品も)腐りかけのようなものしか許可しないんだ」と話した。
規制は生活必需品だけではなく、破壊された家を建て直す建設資材などにも及んでいるという。
家を破壊された住民は「家を建てたくても、セメントが高い。昔なら家を1軒建てられた値段でも、今は1部屋造れるかだよ」と話した。
物資が欠乏するガザ。
そんな中、エジプトと境を接している南部ラファ一帯は、いまやガザ住民の動脈となっている。
ガザの住民は、エジプト住民の協力を取りつけ、境界線近くにトンネルをいくつも掘り、あらゆるものを密輸する形で命をつないでいる。
現場責任者は「(別のトンネルで)エジプトからは食料品、電気製品、各種工具やセメント、あとは封鎖打破のための建築資材も運び込んでいます」と話した。
実際、エジプトとつながるトンネルからは、不足しているという建設資材のセメントが運び出され、ガザの街角では、冷蔵庫や洗濯機、テレビなど、大型家電製品がところ狭しと店先に並ぶ。
商店主は「商品はすべて、トンネルを通じたエジプトからの密輸品だ。中国製やエジプト製、トルコ製...」と話した。
エジプトからは、肉や野菜などの生鮮食品、衣服や生活物資が、ある程度流通するようになった。
いまやガザの生命線ともなっている密輸トンネルは、実は意外な役割を担っているという。
トンネル密輸従事者は「(自分も含めて)封鎖で13万人の労働者が職を失ったんだよ」と話した。
満足な機械もない中、手掘りには多くの人手が必要となる。
密輸トンネルのおかげで職を得たというトンネル密輸従事者は「家族を養うためなら、どんな仕事でもいいよ」と話した。
秘密のトンネルに依存する、ガザ住民の苦悩は続く。

(11/05 00:46)


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