知人が春から耕作している無農薬農園の手入れと収穫を手伝った。スコップで傷つけないようにイモを掘ったり、トマトにそのままかぶりついたり、都会生活で汚れた体と感性がきれいになるようだった▼キャベツを青虫が食い散らかしていたため、一匹ずつ見つけて踏みつぶした。心は痛むが、自分が食べ物にありつくためにはやむを得ない。収穫物は大きさはバラバラで、形はいびつだが、可愛らしくも見えてくる▼体験したのはたった1日。その後、相変わらず化学肥料で育ち、農薬を使った野菜を食べ続けているはずだ。理想の食生活を続ける暇も金もない。でもあのトマト、ちょくちょく食べたい。【熊谷豪】
毎日新聞 2009年10月31日 地方版