米軍普天間飛行場の移設問題で県民は、あらためて県内移設に「ノー」を突き付けた。
琉球新報社と毎日新聞社が共同で10月31日と1日の両日に実施した沖縄の米軍・安全保障問題に関する県民世論調査の結果は、危険極まりない巨大な海兵隊ヘリ基地の代替機能を県内に求めることには無理があり、県外・国外に移すべきだとする「沖縄の民意」を一段と鮮明にした。
日米両政府、とりわけ鳩山由紀夫首相にはこの民意を重く受け止め、県外・国外移設の英断をしてほしい。
◆人権踏みにじる現実
普天間飛行場問題の源流は、1995年9月に起きた駐留米軍兵士による少女乱暴事件である。沖縄本島の住宅街で買い物帰りの女子小学生を、3人の海兵隊員が襲って車に連れ込み、暴行を加えた。
内外の市民団体などは「人権を踏みにじる蛮行」と一斉に反発、県も「断じて許し難い」「軍隊の犯罪だ」と強く抗議した。米側は当時のクリントン米大統領が「極めて遺憾に思う」と謝罪したが、県民の怒りは収まらず、超党派の県民総決起大会が開催された。
大会で当時の大田昌秀知事は「幼い子の尊厳を守れなかったことをおわびしたい」と述べ、基地縮小に決意を示した。高校生代表は「いつまでも米兵におびえ、事故におびえ、危険にさらされながらの生活を続けていくことは嫌です」「軍隊のない、悲劇のない島を返してください」と訴えた。
翌96年、日米両政府は基地負担軽減を象徴する取り組みとして、普天間飛行場の全面返還を合意したが、代替機能を本島東海岸など県内を中心に求めたことから混乱を来した。
名護市の住民投票では基地反対が過半数を占めたが、98年発足の稲嶺県政は移設候補地を辺野古沿岸に決定。名護市長の受け入れ表明もあって、政府が移設先として閣議決定した。
知事や市長が辺野古移設を受け入れたことで、地元は容認しているとの受け止めもあるが、その判断だと民意を見誤る。
今回の世論調査でも、民意は明らかだ。鳩山首相の対応について、県外か国外への移設で米側と交渉すべきだとする回答が約7割を占め、現行計画の辺野古沿岸を支持する5%弱を大幅に上回った。県内移設は仲井真県政が求める辺野古沖合移動案、別の地域案を合わせても25%に届かない。
名護市に限っても、ほぼ同様の傾向があるから、市長の判断は民意を踏まえていないことが分かる。普天間飛行場がある宜野湾市もしかり。市民の約3分の2は県外・国外を求め、辺野古への移設を選択した人は17%にとどまっている。
鳩山首相の「県民の思いをしっかり受け止め、取り組む」との誓いに裏表がないなら「県内移設」の選択肢はあるまい。
◆冷戦終結20年の変化
基地問題は地域発展を阻害する広大な駐留面積に限らず、戦闘機やヘリが日常的にまき散らす騒音、墜落事故の危険性、米兵らによる残忍な事件など多岐にわたる。これらが本土復帰後も絶えず、県民に苦痛を強いている。
これはたまったものでない。県側の要求は本来、痛みの除去だが、軽減・緩和策さえ進んでいないのが現状だ。
民主党中心の鳩山政権の対応は鈍い。選挙戦で県外移設を掲げながら、政権奪取後は正面から検討せず、県内に押し込める方策に知恵をめぐらす印象だ。それは有権者への背信行為ではないのか。
沖縄には憲法がうたう主権在民、基本的人権の尊重、平和主義の3原則が適用されないのかと見まがってしまう。
繰り返すが、民意は県外・国外移設だ。野党多数の県議会は昨年、それまでの政府案に反対する決議をしたし、今夏の衆院選では沖縄の4選挙区すべてで政府案反対の候補が当選した。
2日は自民、公明両党が多数の那覇市議会で普天間の県外・国外移設を求める意見書が可決された。時代は明らかに動いている。
冷戦終結から20年。米海兵隊が沖縄に大挙して居座る理由は薄れた。米側がこだわる日米合意も「消費期限切れ」だろう。
鳩山首相には沖縄の民意を踏まえて決断し、腰を据えて米側と交渉してもらいたい。
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