話題

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

この人に聞きたい:NPO法人「地域医療を育てる会」理事長・藤本晴枝さん /千葉

 ◇住民視点で情報発信 医療現場の課題共有し改善図る

 医師不足や医療機関の経営破綻(はたん)などが身の回りで深刻化するなか、住民の立場で地元の医療を考え、情報発信しようとする民間団体が東金市で地道に活動している。NPO法人「地域医療を育てる会」の藤本晴枝理事長に話を聞いた。

 --「地域医療を育てる会」とはどんな会ですか。

 これまで、医療は行政と医療機関が形を整え、私たち住民はそれを利用するだけでした。医師不足が叫ばれるなか、私たちも単に医療サービスを受けるだけでなく、積極的に医療情報を得て、現在の医療現場が抱える課題などを誰にも分かるような形で発信していくことが必要ではないかと考えています。

 --会をつくったきっかけは。

 05年に地元で「地域医療センター構想」についてのシンポジウムを聞いたとき、人手不足などで疲弊する医療現場のことを聞きました。住民は「~してほしい」と言い、行政や医療関係者は苦しい状況を説明しようとしない。住民や保健担当者など、さまざまな人が医療の現状の課題を共有し、互いを理解し、現状を打破できればと考えました。

 --どんなことをしているのですか。

 医療を巡るさまざまなトピックを伝える情報紙の発行やブログ「クローバー」の更新、また、県立東金病院と共同で免許を取得したばかりの医師(レジデント)の研修や、医療について考える勉強会も開いています。最近は、医師の「過重労働」を少しでも軽減させるため、近くの病院に行けば済むような症状なのに、深夜早朝に気軽に救急病院に駆け込む「コンビニ受診」の問題を伝えようとしています。

 --昨年10月「くませんせいのSOS」(A5判、44ページ)という絵本を自費出版しましたね。

 若いお母さんや子どもたちに「コンビニ受診」のことを知ってもらおうと製作しました。物語は、病気になると、これまでは物知りのヤギのおばあさんに相談していた森に住む動物たちが、クマのお医者さんが赴任すると軽い症状でも受診、クマの先生が過労で倒れてしまうという物語です。小児科閉鎖に直面し、地域の小児医療について考える住民グループ「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」(兵庫県丹波市)の協力を得て、昨年の夏休みに文と絵を書き、完成させました。

 --反響が大きいようですね。

 PTAや自治体でまとめて購入して下さるところも多く、1年ほどで6000部を突破しました。小さい子供たちから「クマの先生かわいそう」と率直な感想をもらい、うれしくなりました。

 --本がきっかけで住民の意識は変わってきましたか。

 そこまでは行っていません。ただ、この絵本をもとに、宮崎県延岡市の健康づくりのためのボランティア団体「のべおか元気かい」が劇として上演するなど、活動が広がっています。これからも地道に地域医療の情報提供と意見交換ができればと思います。【聞き手・森有正】

==============

 ■人物略歴

 ◇ふじもと・はるえ

 1964年、東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒。05年4月、市民団体「地域医療を育てる会」を発足。同年12月、同会をNPO法人化する。絵本「くませんせいのSOS」は1冊500円。注文や問い合わせは同会ホームページhttp://iryou‐sodateru.com/

毎日新聞 2009年11月3日 東京朝刊

検索:

PR情報

話題 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド