古都狂奏曲 (特別編)    愛のイニシエーション~万能の自己啓発~

 この物語は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


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雑談系2 [ガチホモ] “【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 3”
426 名前:古都狂奏曲① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 02:04:19 ID:LaMkynKR


オレの名前は国枝洋介、世間で言うFラン大学の2回生。
同じ部の先輩と両思いになって数週間だけど、先輩がどこかよそよそしいとゆーか、
俺に内緒で何か悩んでるみたいでちょっと淋しい。
年下のオレだけど、何でも話して欲しいし、先輩のことは何でも知っときたい。
・・先輩の気持ちが掴めなくて、日々悶々としてる。好きっていう感情はいつも難しい。
先輩にはいつも笑っていてもらいたいのに、機嫌が良さそうに誰かと話してるとムカつく。
先輩のためなら何だってしたいよ。見返りなんて要らない。
先輩がオレを必要としてくれればそれだけでいいのに。
・・気持ちばっかり先走って、なかなか上手くいかない。
オレの全ては先輩のためにあるし、先輩のためなら全て捨てられる。
この気持ちはだけはオレの中の真実。
今日だって一緒に帰ろって言ったのに、先輩は不機嫌そうな顔をして先に帰ってしまった。

「オレのどこがいけないのかな~?」涙目でパソコンの画面を開く。nixiにログインする。
「国枝、元気か?」大学のコミュニティの管理人の尾町さんからメッセが届いていた。
尾町さんはオレよりずっとずっと年上の先輩で、大人の人。
誰かに気にしてもらってるのが嬉しくて、すぐメッセを返した。
「最近、いろいろ上手く行かないんです」って。
先輩も大学のコミュニティに入ってるから、二人の関係を話すことはできないけど。
「悩みあるんか?ちょうど京都で問題解決のプログラミングセミナーがあるから出てみないか?」とすぐに返事が返ってきた。
・・問題解決かぁ・・オレは先輩と愛を健全な愛をはぐくめないという重大かつ深刻な問題を抱えている。
そのセミナーに出れば、先輩がオレを愛してくれる秘策が見付かるのかな?
「あ・・それってなんすか?」尾町さんに聞いてみた。
「君の人生を充実させるためのメゾットを学ぶセミナーだよ」
・・充実した人生=愛のある人生。あぁ、オレはこのセミナーに行かなければならないかもしれない。。。
「あ、行きます」とメッセすると、「詳細はメールしておくから」と返事があった。

セミナーの日。入り口で会費を払う。1000円だから別にいいや。これで先輩の愛が手に入れられるなら安すぎる。
商業用ビルの一角を間借りしたような綺麗な部屋の中に、英語で書かれたボードやきちんとスーツを着てにこやかに微笑む受付の人。
学生のオレは気後れしてしまう。こんなとこ来たの初めてだ。
開始の時間になり、講師の人が入ってくる。
いきなり、ホワイトボードに何か書き出す。
「You can do it!」でかく書かれたその英文は、オレにだって意味がわかった。「あなたはそれをできます」だ。
講師がいきなりものすごく大きな声で叫びだす。
「ゆ~~~~~きゃん どぅ いっとっっっっっ」
「さぁ、みなさんもまずここから始めましょう。私の後に続いてぇぇ~~、ゆ~~~~きゃん どぅ いっとっ!」
周りの人がぼそぼそと小さな声で講師の言葉に続いた。
・・オレはどうやらとんでもないところに来てしまったみたいだ。
「今日はまずこの言葉を胸に刻んでください。そしてこのセミナーが終わった後、あなたはそれを実感することができるでしょう」
講師の人がうって代わったように穏やかな声で言った。
「では、早速みなさんと人生の問題解決、ソリューーーョンについて学んで行きましょう。
まず始めにご紹介したいのは、このメゾットがアメリカで開発されたプログラムを元に、
私どもの日本代表が日本人向けに改良を加えたものであるということです」
「あなたが抱えている問題はなんですか?」講師は一人ひとりの顔を見る。
「右の方からお答えください」長く伸ばしたポインターで、回答者を指名する。
「金銭問題です」中年のおばちゃんが答えた。
「人間関係がうまくいかなくて」気の弱そうなサラリーマン風の男が続く。
オレの番が近づいてきた。どうしよう・・ホモの恋愛の悩みです、とは口が裂けても言えない。
「れ、恋愛が・・恋愛が・・あのぅ・・そのぉ・・」オレはしどろもどろになってしまった。
「恋愛問題ね」講師が神妙な顔でうなずいてくれた。
「人生は様々な問題があります。みなさんに伺っただけでも多種多様。
私どもはみなさんの抱えている問題について、解決策を見付けるお手伝いをしたいと思います。
私が指摘したいのはみなさんの姿勢です」
アシスタントのお姉さんが長い定規を持ってきた。
「みなさん、一様に姿勢が悪い。背中を丸めて前かがみになっている」
講師が前かがみになってみせ、そのあと海老ぞりのように体を前にそらした。
「困難を体で受け止めるべく、まずこういう姿勢をとってください」
・・はぁ?はぁ?はぁ?オレは先輩に受け入れてもらいたいだけなんだけど?
アシスタントのお姉さんが、一人ひとりを回り、どれだけ背がそっているのか定規で測り始めた。
・・もぉ、オレ帰りたいよぉ。なんでこんなとこ来ちゃったんだろ。。。

その後は喉が枯れるほど、「ポジティブシンキング!!!」と叫ばされた。
レクチャーもあった。
「あなたが不可能だと思っていることは、実はそうではありません。今日から価値観を変えましょう」
「苦痛とは受ける側の器が小さいことが原因で生じるものなのです。 己の限度を超えてしまうから感じるものなのです。
自分の器を大きくすれば、苦痛もなくなるのです」
「善とはなにか、悪とはなにか、それを考えるのは全く無意味なことなのです。
人生を充実させることにより自分も周囲も幸せになれば、自ずから見えてくるものなのです」
摩訶不思議な教えをオレはただぽかんと口を開けて聞いていた。

帰宅して、nixiにログインすると尾町さんからメッセがあった。
「無事参加したようだね、どうだった?次のセミナーの詳細もメールしてくからね。君の人生に幸あれ」
・・どんよりした気持ちでメールを見ると、その金額に驚いてしまった。
10万円!!!先輩とエッチなホテルに10回ぐらい行ける。

なんだか、怪我してるのに縫わないで、痛み止めだけ飲んでるような感じだなと思った。
痛み止めの種類や飲み方をいくら教えてもらったって、傷口はいつになってもふさがらない。
価値観だとか、善悪の基準とかは、自分で痛い目にあって少しずつ自分で作っていくもんだよ。
誰かにお仕着せで作ってもらうものじゃないよ。
その方が楽だけど、そうしてしまえば、きっとオレがオレでなくなっちゃうよ。
たとえ道を間違って半年停学とか食らうことがあったって、オレはそのほうがいいよ。
精神的に落ち込んで立ち直れない日が続いても、自分で精一杯どうしたらいいかを考えるよ。
だって、そうじゃなきゃ本当に大人の人になれないじゃんか。
前向きに生きられる考え方の勉強なんてオレはしたくないよ。
傷つくのは怖くないよ。失敗するのも怖くない。
本当に怖いのは、自分が自分でなくなることだよ。
いつも肯定的な考え方をして、痛みを感じない人間になんかなりたくないよ!
だいたいオレはバカだから、痛い思いをしないとわからないことがたくさんある
・・尾町さんにそう言おうと思ったけど、きっと言ってもわかってくれない。
オレはオレのやり方で先輩との距離を縮めていく。

今度、ドライブに誘ってみよう。満点の星の下で先輩に愛を語るんだ!
先輩の大好きなたけのこの里も持っていこう!
わくわくしながら計画を立てたら、すぐに眠くなってきた。