古都狂奏曲 第四章その2 愛の残像~報復の値段~
この作品は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 6
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835 名前:古都狂奏曲① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:39:11 ID:ZUOF1fnL



都内にあるマンションの一室で、他のスタッフと一緒に客待ちをしている彰浩がマネージャーに呼ばれたのは、
火曜日のことだった。
「ねー、あきらちゃん、頼むよー。一回寺内さんとこ行ってくれない?」
寺内というのは、この店でも有名な過激プレーを好む客で、全スタッフから敬遠されている。
「いやですよ。体保ちませんよ。みんな1週間は再起不能になって戻ってくるじゃないですか」
断る彰浩にマネージャーが食い下がる。
「ね、一回だけでいいから。お金落としてくれるお客さんなんだよ」
拝む仕草で頼むマネージャーに、携帯の留守録をチェックしながら逆方向を向く彰浩。
「先輩、金曜日空けておいてください」
再生をすると、聞きたくもない後輩国定の声でメッセージが入っていた。
「・・いいですよ、俺行きます」
「よかったぁ!じゃ、場所と時間、これね」
小さな紙を手に、彰浩は嫌な笑みを漏らした。

体を売って生活をする・・彰浩が故郷を離れこんな暮らしをするようになったのは、
他でもない電話をかけてきた後輩のクニが、同じ専攻の仲間と彰浩を集団で輪姦したからだ。
学校中に事件が知れ渡り、当然通学は不可能。
それどころか、みんなが自分を見て嘲笑っているような気がして、怖くて外出すら出来なくなった。
事件の恐怖から部屋を暗くして眠れない。暗闇は事件現場の薄暗い部室を思い起こさせるからだ。
家族はそっとしておいてくれたが、その心遣いも彰浩には苦しいものだった。
独りで自室に篭っていると、突然怒りと悲しみが湧き出してきて、激しい感情をどうすることも出来ない。
食事をしながら何気なくテレビを見ても、事件を思い出すキーワードが出てくると嘔吐してしまう。
あの日から何日経ったか、日にちの感覚もわからなくなっていた。
家族がさすがに、「病院へ」と言い出した頃、彰浩は自分のわずかな貯金を持って、最終の新幹線で東京に来た。
耳慣れない関東の言葉。自分を知らない人たち。大勢の人間がいる首都。
彰浩はここでなら生きていける気がした。
東京から新宿の繁華街へ向かうと、深夜だというのに人通りも多かった。夜になると闇に包まれる故郷とは大違いだ。
そこで声をかけられるままに、今の仕事をするようになった。
見知らぬ男に体を好きにされるのは、慣れの問題でどうせ汚れた身体なんだからと割り切ってしまえば平気だったし、
仕事をこなす内にだんだんと暗闇も怖くなくなっていった。
「俺はもう金と自分しか信じない」
信頼していた仲間に集団でレイプされた彰浩は、そう強く思うことでしか立ち上がることが出来なかった。

金曜日、指定してきたホテルの部屋に入ると、すでにクニは彰浩を待っていた。
彰浩は無表情でタバコに火を点ける。
「先輩、タバコ吸うようになったんだ・・俺にもちょうだい」
黙って差し出す。
クニは喫煙していなかったのか、思うようにふかすことも出来ないみたいだ。
・・どこまでも鈍臭いやつ、彰浩は思った。こいつには嫌悪の気持ちしか沸かない。
「先輩、こ、これね」
クニがリボンのかかった箱を手渡してくる。
彰浩は、乱暴にラッピングを剥ぐと、白いシャツを取り出した。
「先輩、白似合うから」
その一言に無性に腹が立った。今の自分に純白など似合うわけがない。
汚れきった自分にこんなものを着ろと言うのか。
手に取ったシャツを、思い切り引き裂く。
クニの表情がどんどん曇っていくのがわかる。
それでもクニは
「・・そっか、気に入らなかったんだ。・・でも、少し嬉しいかも。先輩今までイヤなことイヤってあんまり言わなかった」
そう言って少し寂しげに微笑んだ。
俺の何を知ってる?彰浩は思う。
あんなことをされて、今更好意を見せられて、「はい、そうですか」と受け取ると思っているのか。
俺の見てきた地獄を、こいつにも味あわせてやる。復讐は計画通りに遂行する。


「ところでクニ、あのな」
「ん?」
「俺今日、体調悪くて仕事できへんから、おまえ、代わりに行ってくれない?」
「え?」
「予約入ってるねん。十時から、泊まりで。おまえ、俺の代わりに稼いで来てきてよ」
驚愕の顔を見せるクニに、加虐心が満足するのがわかる。
「相手二人だから。結構ハードなプレーすると思うけど」
「・・・」
「おまえ、俺のやってる仕事が出来ないっていうのか?」
「わかった。行ってくるよ。先輩はここでゆっくりしていて」
クニは、真っ直ぐ彰浩の瞳を見つめて答える。
「その代わり、今日は俺もお客さんだから。仕事して」
そう言うと、彰浩を優しく抱き寄せ丁寧に口づけて、
簡単にホテルの場所を書いたメモを持って部屋を出ていた。

クニが出ていた後、まんじりともせずに夜を過ごした。
ベッドに横たわり、タバコを吸っては消す。
「これでもう俺には付き纏わないだろな」と、ふっとため息をつきながら思う。
彰浩の脳裏に遠い記憶が蘇る。学生の頃、部の後輩クニは子犬みたいにいつでも自分の後をついてきた。
振り払っても邪険にしても、「せんぱーい」と満面の笑みで駆け寄ってきた。
・・どこでボタンを掛け間違えたんだろう。
古い記憶は、固く閉ざされた封印を解いてしまう。二度と思い出したくない忌わしい闇も連れてくる。
それから逃れるように、彰浩はすぐさまクニが今何をされているか想像してみる。
プロであるスタッフも厭う寺内のプレー。不慣れなあいつには拷問以外何物でもないだろう。
・・戻ってきたら文句を言うんかな?彰浩はクニの反応を思い浮かべ、そっと笑った。

明け方トントンとノックする音が聞こえ、カードキーを開けてクニが帰ってきた。
「先輩、お金いっぱいもらったよ」
彰浩に数枚の札を渡す手が震えている。
無言で受け取る彰浩にクニは言葉を続けた。
「これから、先輩の代わりに俺がお客さんとるから。週末だけになるけど。俺平気だから」
平気だからという言葉とは裏腹に、その表情は青ざめている。
「それと、これ、今日ここにいてくれた分」
さらに六枚の札を渡された。
「もうやめてくれないか!」彰浩は混乱したままクニを怒鳴りつけた。
「おまえ自分のしたことを考えろ!なんで俺に・・」そのまま言葉を失う。
クニは彰浩をきつく抱きしめ、何度も何度も「ごめんなさい」と繰り返した。
「謝ってすむことなのか?」少し落ち着いた彰浩が問い質す。
「俺の出来ること、するから。また来週するから」

クニが帰った部屋で、一人彰浩は紫煙をくゆらせた。
そういえば、学生時代いつもあいつは俺にお菓子を持ってきたな
・・ぼんやりとそのパッケージを思い出すと、何故だか涙が止まらなくなった。