古都狂奏曲 (第二章 その七)  愛のプラネット~青い星の生き物たち~

この物語は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありませんhttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/aniki/1247101002/
雑談系2 [ガチホモ] “【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 ”
793 名前:古都狂奏曲① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 01:48:12 ID:7ijuqU9/

(第二章 その七)愛のプラネット~青い星の生き物たち~
俺の名前は窪田彰雪、世間で言うFラン大学の3回生だ。
相変わらず俺にべったりするクニと、もうどうでもいいや状態の俺。
考えることを放棄して、思考を停止したままの生活が続いているが、特になんの不自由も感じてはいなかった。
ギャンブルに酒。クニの目を盗んで商売女と遊んだり、授業と練習。友人とたわいない会話。日々の生活は何気なく過ぎていく。
一旦迎合してしまえば、その後は何も苦しくない。洗脳は抗うから疲れるのであって、洗脳後は何も考えなくてすむ。
昔見た吸血鬼の映画を思い出す。吸血鬼から必死で逃げる人々。いざ血を吸われ、自分自身も同化してしまえば、
恐怖も戸惑いも何もなくなっていく。
俺ももうすっかりモンスターの一員なんだろう。
「先輩、今日ちょっとつきあって」クニが誘ってくる。「いいよ」とだけそっけなく返す。
練習を終え、車で来たというクニの後に続き駐車場へ。先日無理やりクニに犯されてから、俺たちは会話が極端に少なくなっていた。
かといって無視をするというわけではなく、俺はひたすらクニに従っている。

「ついたよ」小高い山の中腹にある公園で車を停めて、クニが車から出るように促す。
目に飛び込んできたのは、一面の夜景と星空。
「お、お、俺、俺、俺ね、先輩にあやまらないと・・あやまらないと」クニが泣いている。
「こないだ、こないだ、ごめんなさい」抱きついてくる。
もう夜は涼しいを通り越して少し寒いぐらいだからか、クニの体温が心地いい。
涙がシャツを濡らしたせいで、クニが本当に泣いてるのがわかる。
・・今回は嘘泣きじゃないんだな・・そんなことを思ったら笑ってしまった。
「せ、せ、先輩、何笑ってるの?先輩笑うの久しぶり。お、お、俺、嬉しいよ、嬉しいよ」しゃくりあげながら、クニが言う。
商売女を抱いても、得られなかったぬくもり。
薄汚い世界の中で、きっとこいつの気持ちだけはホンモノなんだろう。
たとえこれが恋愛とは違っていても、俺はこのたった一つのキレイなものに縋ってもいいような気がしてきた。
クニの唇ゆっくりと近づいてくる・・

「ああ、おじゃまかな?」もっさいジャージを来た男が、声をかけてきた。
と、いうよりは、天体観測をしていたようで、俺たちの方が邪魔をしていたらしい。
長い大きな望遠鏡。寝袋があるのはどういうことなんだろう?
ボサボサの髪のその男は、身なりの割にはさわやかに饒舌に話しかけてくる。
「君たちも輝く星のロマンに誘われてここに来たの?星は何億光年という時を越えて話しかけてくるんだよ?
星の声が聞こえるかい?目を凝らして耳を澄ますと星からのメッセージが届くんだよ」うっとりした顔でそう続ける。
・・イっちゃってる。俺は直感でそう思った。確実にイってしまってる。
この男は、いい年をして真面目に宇宙と交信しようとしているのだ。
平川と名乗ったその男は、聞けばこの地域では有名国立大に通っていて、
地球惑星学という銀河鉄道を彷彿させるような学科を専攻しているらしい。
「俺、火星人と遭遇したことあります!」クニが突然言い出す。
「本当かい?どんな容姿だった?君は拉致られたの?」平川は目をキラキラさせて言う。
「火星人はタコみたいな顔をしていました!俺は円盤に乗せられて、記憶を消されそうになったけど、
タックルして逃げてきました」クニが大真面目な顔で続ける。
質問を浴びせようと平川が口を開きかけたと同時に
「でもこれ以上は火星人の報復が怖いのでお話できません」クニがびしっと言い放つ。
帰宅途中の車の中でクニに聞いてみる。「お前、本当にあんな経験したのか?」
「嘘です」あっさりクニが言う。「先輩といいとこ邪魔されたでしょ。仕返しっス」
「あの人、騙されやすくて基本バカだから、そのうち新興宗教に入るよ!入るよ!」クニがニヤニヤ笑ってる。
・・平川さんね、よく言えば純粋培養系の天然というか、悪く言えば底なしのアホというか。
変なヤツに会ったけど、気持ちが落ち着いてきたのは確かだった。

翌日、クニといつものように練習の後、いつものように部室で身体を重ねる。
少しだけ積極的に応じてもみる。今日のクニは壊れ物に触るように扱ってくれている。
「先輩、舐めて」クニに髪を梳かれながら、ねだられる。跪いて従う。
「好き。先輩。本当に好き」クニの言葉が耳に優しい。刹那の快楽と誰かに愛されている安心感。
そんなもので今は覆いつくしてしまいたい。
「先輩は俺のものだから、浮気とかダメだから。絶対ダメだから」何度も繰り返すクニに、口での愛撫をやめずに頷く。
いつになく穏やかなセックス。
こうやって誰かの言うとおり、誰かの指示通り全てのことをこなしていけばいい。
「ずっと一緒だから。約束だから」首筋をそっと撫でるクニの手が心地よくて、俺は初めて自分からクニに続きを求めた。

ぐったりとした身体をクニに支えられながら、部室を出ると、そこには見慣れたチェックのチュニックを着たメガネ女がいた。
・・こいつは寒くないのか?何故いつもこの服なんだ?オタク趣味に溺れて洗濯する時間もないのか?
他に服がないのか?それとも同じ服を何枚も持っているのか?
・・俺の頭の中をいくつもの「?」がよぎる。とにかく、俺の顔を見ながらモジモジしているこの女が限りなくキショい!
ついでにてんとう虫とクローバーのバッグが不気味だ!上目づかいもやめてくれ!
「あのーですね、だいぶもふもふしていましたねー。ゆさゆさもしてましたねー。
猫タソみたいにクニタソにもっともっと甘えたほうがいいですぅ。私は王子様系が大好物でして、
王子受けに敏感に反応する人なんです。アレルギー体質で身体が弱いんですけどねー。
金属アレルギーも持ってるんですよー。蚊にも刺され易いし大変なんですぅ。
あ、でも可愛い虫さんは好きなんですよぉ、それでですね・・」
いつものようにまた一人でしゃべっている。
こいつは毎回毎回服装と同じで、話し方も変わらない。
俺とクニは無言でちさめを後にした。


問題を根本から解決することをしなくても、バランスを上手くとることができれば、
なんとか楽しくやっていけるような気がしていた。腐った学校だけれど学生には甘いし。
クニのことだって今はそこそこ相手をしてやって、そのうち俺に彼女でも出来れば諦めるだろう。
深く考えずに、明日のこと、あさってのこと、一週間後のこと、それだけを考えて、あとは時間が過ぎるのを待とう。

・・と、この考えが全く甘かったことを痛感する出来事が待っていようとは、そのときの俺にはわからなかった。