「『難病と闘う』とか『難病に負けず』はNGワードにしてほしいんです」。今月中旬、山梨市で講演した筋ジストロフィー患者、菊池洋勝さん(38)=宇都宮市在住=を取材した際、最初に言われた言葉だ。
20歳まで生きられないと診断されながら、イラストレーターとして活動する菊池さん。長旅の疲れからか、体調が万全でないのに、約2時間にわたって語ってくれた。その言葉の端々から「一定の型にはめてほしくない」という気持ちが伝わってきた。
しかし、いざ原稿にしてみると、我ながら衝撃を受けた。「難病」といかに「闘って」きたか。まさしく菊池さんの言う「定型」にはまっていた。
テレビ番組などで、難病患者や障害者の生き方を美化し、それを見物しながら涙を流して称賛する人々がいる。その光景にいつも違和感を覚えていたはずなのに。
何度も書き直して記事にしたが、本当に伝えたいことを書けたか、自信がない。「絶望してふてる時もあるし、仲間と騒いで楽しい時もある。誰でも一緒じゃないですか?」。菊池さんの言葉に多くを学んだ。【山梨駐在・曹美河】
毎日新聞 2009年10月30日 地方版