関西の大手家電メーカーに入社が内定している神戸大経営学部4年の男子学生が今夏、ホームレスに生卵を投げつける様子を動画撮影し、会員制日記サイト「ミクシィ」に掲載していたことが分かった。同大は学生から事情を聴き、30日までに「すべて自作自演だった」と結論づけたが、疑問点は多い。そもそも、なぜこのような悪質な動画を制作・公開する必要があったのか。
この男子学生は、掲載した動画について、《深夜の大都会で寝ている不届き物(原文のまま)に大沢親分顔負けの「喝っ」! 助走をつけ力走した生卵が顔面(口)に直撃。口から血が出てました》などと記述していたが、騒ぎが大きくなったため、あわててミクシィを退会。しかし、動画の存在に気づいたネットユーザーらが今月28日に掲示板などに転載し、騒動は広がっていった。
事態を把握した神戸大は29日、学生に直接事情聴取。その結果、学生は(1)友人に誘われ、数人のグループで神戸・三宮の広場でパフォーマンスをした(2)別の友人がホームレスにふんし、その一部を映像に撮った(3)友人だけに見せるつもりが、動画がその範囲を超えて公開される仕組みを知らなかった−と結論づけ、学部長の口頭での厳重注意にとどめた。
しかし、動画を制作した意図については「聞き取りできていない」「全体像が見えていない」(同大広報課)としたうえで、今後の教育的指導についても「制作した意図が分からない以上、悪質とは決めつけられない」と、事実上不問に付した。
さらに、現場に居合わせたとみられる同大医学部4年の男子学生が29日、“ホームレス役”とされる男の写真をミクシィ上で公開して騒ぎの沈静化を図ったが、最初に公開された動画とは背景の細部が異なるとの疑惑が浮上。これ以上、騒ぎを広めたくない大学の思惑とは裏腹に、本当に自作自演だったのかどうか疑問は深まるばかりだ。
一連の学生の行為に対し、ホームレスを支援する「野宿者ネットワーク」(大阪)の生田武志代表(45)は「野宿者への“襲撃風景”を撮影し公開するという発想自体が異常。実際に襲ったのか自作自演かはさておき、この神戸大生たちの間では、野宿者への襲撃が笑いのネタとなっていたと考えられる。問題の根は深い」と話す。
男子学生は大手家電メーカーの営業・マーケティング部門に入社が内定しているが、内定者を対象にしたパーティーに関する日記にも《ビンゴゲー…裏カジノも行われてたぜ》などと記述していた。事態を重く見たメーカーは「本人に事実関係を確認する。確認後、適切に対応する」(広報)とコメント。30日にも神戸大に出向き、改めて事情を聴くという。