米紙ニューヨーク・タイムズは28日付で、米中央情報局(CIA)がアフガニスタンのカルザイ大統領の弟に過去8年間にわたって金銭を提供していたと報じた。反政府勢力タリバーンの掃討作戦に協力した見返りという。弟は、タリバーンの資金源とされる麻薬の密輸にかかわっているとの疑惑があり、米政府内には、その蜜月関係を疑問視する声が出ている。
弟は、アフマド・ワリ・カルザイ氏。タリバーンの影響力が強いアフガン南部カンダハル州で州議会議長を務める。複数の米高官が同紙に語ったところでは、アフマド氏は、タリバーンの創設者オマール師の自宅だったカンダハル市郊外の建物を、CIAや特殊部隊の兵士向けに貸し出し、見返りの報酬を得ていた。タリバーンに忠誠心を抱くアフガン人とCIAを仲介し、面会や情報交換をさせたという。報酬金額は明らかにされていない。
カブールの軍幹部は「数百万ドルの麻薬マネーが南部で動いているのに、南部の指導者が知らないはずはない」と指摘し、「彼が麻薬取引から利益を得ていると思う」と話す。同紙は、タリバーンの資金源である麻薬取引の撲滅に米政府が全力を尽くしていない、と指摘している。
米オバマ政権は、決選投票が決まったアフガン大統領選挙などを通じて、アフガンに強い民主的な中央集権国家をつくるよう促しているが、南部の有力者との「深い関係」は、こうした政策を妨げるとの議論も政権内で噴出。アフマド氏は「南部を牛耳るマフィアのような邪悪な権力」だとして、怒りをあらわにする政権高官もいるという。(前川浩之)