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シベリア抑留国賠訴訟:原告の児玉さん「戦争の実態、反省を」--あす判決 /京都

 ◇暗黒の青春、何だった

 28日午後1時半に迫ったシベリア抑留者57人による国家賠償請求訴訟の京都地裁判決。原告の児玉哲郎さん(85)=大阪府吹田市=は抑留体験を語り始めてまだ数年しかたたない。抑留から帰国すると「平和だ、民主主義だ」の大合唱。いつしか「思い出したくない過去」とふたをしていた。裁判は「あの暗黒の青春時代の意義を確かめたい」という思いを訴える場でもある。【熊谷豪】

 1943年11月に学徒出陣で中国に渡った。「天皇のため」と自分なりに意味づけをして死ぬ覚悟をした。終戦を迎えると今度は「ソ連の指示に従え」。カザフスタンの収容所で石灰石の山の爆破作業などの強制労働に従事した。「なぜソ連のために?」。割り切れない思いが続いた。

 3年後の帰国直前、抑留者はスターリンへの感謝状贈呈式を開いた。ソ連に忠誠を誓えば日本に早く帰れるという一心からだが、最後まで茶番だった。

 帰国して故郷の島根県で中学校教師になった。「思い出すのも嫌。話しても分かってもらえない」。自分が「浦島太郎」に感じた。妻にも生徒にも悲惨な体験を話すことはなかった。

 しかし退職後、自分史で戦争体験を書き、高校に招かれて講演もした。中国でのゲリラ戦など加害の側面も語る。すべて戦争の実態だと思うからだ。今年2月には法廷で「日本は戦争の責任、戦争の実態への反省がない。責任をはっきりしてほしい」と訴えた。

 「先の大戦におけるご労苦に対し、心から慰藉(いしゃ)の念を表します」。07年、政府から贈られた「特別慰労品」に添えられていた言葉にも「お茶を濁そうとしている」と感じる。今は、判決がはっきりとした「回答」となることを願うばかりだ。

毎日新聞 2009年10月27日 地方版

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