自分たちだけでなくノミもシラミも仏様になれますように。そう書かれた鎌倉時代の文書が、唐招提寺礼堂(奈良市)の釈迦如来像に納められているという。この像を本尊とする法要「釈迦念仏会」にお参りしたくて、夜明け前の午前4時に寺を訪れた。
私以外の参詣者は2人だけ。灯明の火がゆらめく堂内で、僧がゆっくりと静かに「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶ)」と唱える。
すべては等しく尊い、とお釈迦様は説く。言葉にするのは簡単でも、理解するのは難しい。しかし、ノミもシラミも仏になってほしいと願った先輩たちがいた。その証拠がこの法要だ。お参りできたことがうれしくて、胸がいっぱいになった。(花澤)
毎日新聞 2009年10月28日 地方版