Alexis Madrigal

ラトビアの小さな町、マサラツァ近くで25日夜(現地時間)、何らかの物体が地面に衝突し、直径8メートル近くの大きな穴を残した、という報道が世界各地で行なわれた[時事通信の記事など]。

状況を記録した『YouTube』のビデオでは、数人の興奮したラトビア人たちが穴に駆け寄り、品の悪い英語で驚きの声を上げる様子が写っている[冒頭の動画]。

現在、ラトビアの科学者たちが昼間の光の下で現場を調査しているが、どうやらこれはでっち上げのようだ。

ロンドンにある自然史博物館の学芸員で隕石を専門にするCaroline Smith氏は、Wired.comに宛てた電子メールの中で、「クレーターとその底で燃えている物質を写したこれらの写真やビデオは、隕石によるとされるこのラトビアのクレーターが、衝突によってできたものではないことを示している。隕石は地上で発見されるとき、"火がついている"ことはおろか、熱いこともない」と述べた。

[隕石表面にぶつかる大気は数千度から1万度以上という温度に加熱され、この高温大気に接することで、隕石表面は溶融・蒸発してゆくが、加熱される時間は数秒であり、加熱の影響は表面のごく薄い層にとどまる。落下した隕石表面には隕石自身が熔けてできた厚さ1ミリメートル程度の黒皮、すなわち「溶融被殻(fusion crust)」が形成されている]

「さらに、このクレーターが形成されたとされる25日の午後に、この地域で大きな火の玉のようなものを見たという目撃情報は1つも入っていない」とSmith氏は述べる。

ラトビアの研究者たちも同様の結論に達している。「これは本物のクレーターではない。人工のものだ」と、ラトビアのEnvironment, Geology and Meteorology Centerの研究者Uldis Nulle氏は、26日にクレーターを調査したあとでAPに対して述べている。別の研究者も、このクレーターはパワーショベルによって掘られたものだと述べている。

米航空宇宙局(NASA)では通常、大きさが1メートル以上になる物体の追跡を続けている。軌道残骸の専門家である米ジョンソン宇宙センターのGene Stansbury氏によると、宇宙ゴミが地球の環境に再突入する予想を示していた記録はないという。


Image: Associated Press.

[日本語版:ガリレオ-平井眞弓]

WIRED NEWS 原文(English)

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