今月上旬、学生時代の友人や東京本社で働く同期数人に久しぶりに会った。全員に言われた言葉が「強くなったね」。どうやら「神経がずぶとくなった」ということらしい。
記者になって7カ月。確かに自分でも思い当たることはある。ある事件の加害者について、近所の住宅一軒一軒に「どのような暮らしぶりだったのか」など聞いて回った。すると60代くらいの男性から、こう言われ、そのままドアを閉められた。「あんたは人の不幸を楽しんでいる顔をしている」
そんな気持ちは全くなかったが、「マスコミ」に対する世間一般の厳しい見方を感じ、その言葉がしばらく胸に刺さって抜けなかった。
だが、次々に起こる事件や事故の取材をするうち、そのショックは次第に薄れていった。記者になったばかりのころは、毎日県内のどこかで事故が起き、誰かが逮捕されていることに驚き、人々の人生に思いをはせていた。どこかに「慣れ」が出ていないか。「ずぶとい」という友人たちの言葉をきっかけに、もう一度初心に戻りたい。【甲府支局・山口香織】
毎日新聞 2009年10月27日 地方版