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社会

刑罰か福祉か、重度知的障害の被告あす地裁判決 

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今後の生活について女性被告(右)と話し合う谷村弁護士(左)ら=大阪府内

 住居侵入や器物損壊の罪に問われ、重度の知的障害がある女性被告(33)の判決が28日、神戸地裁尼崎支部で言い渡される。「規範意識が乏しく、再犯の恐れが大きい」と主張する検察側と、「障害に配慮せずに裁くのは、法の下の平等を定めた憲法に違反する」として無罪か公訴棄却を求める弁護側が対立。福祉の支援を受けられず、犯罪を繰り返してきた女性に対し、司法はどんな判断を示すか注目される。

 「なぜ、裁判を受けているのか分かる?」

 「…。分からへん」

 今月23日、大阪府内の福祉施設で暮らす女性は谷村慎介弁護士(40)の問いに、こう答えた。

 公判は2008年1月から計11回開かれた。被告席の女性は、隣に座る支援者の手をいつも握っていた。被告人質問では、質問331回のうち無回答が97回、首を動かすだけが158回。言葉にしたものでも「分からない」が半数を占めた。

 発達検査の結果、知的水準は4〜5歳程度と分かった。谷村弁護士は「裁判は、ルールの分からない者を無理やり当てはめ、もてあそんでいるだけだ」と指摘する。

 尼崎市出身。授業についていけず、小学生で不登校に。中学卒業後は清掃会社やパチンコ店に勤めたが、生活は困窮。無施錠の家に入り、現金などの盗みを繰り返した。04年から1年半、和歌山刑務所に服役。障害に応じた社会復帰訓練はなかった。出所後、民家への侵入や、自転車の風よけを燃やすなどした。

 そのころ、知人の勧めで知的障害者に交付される療育手帳を申請。07年にA判定(重度)を受けた。だが、障害年金を自分で管理できなかった。

 起訴後、国選弁護士が女性と意思疎通ができないことに気づき、知的障害者の刑事弁護に詳しい谷村弁護士に相談した。谷村弁護士らは福祉施設の確保や成年後見人の選定に奔走。尼崎市やNPOもかかわる「支援計画書」を作り、裁判所に提出した。被害者には弁償した上で「処罰を求めない」とする文書も受け取った。谷村弁護士は「再犯防止に必要なのは刑罰ではなく福祉的な支援体制ではないか」と問う。

 一方、検察側は、勤務経験など一定の社会生活を送っていたことなどから「完全責任能力はあった」と主張するが、示談成立を踏まえて罰金50万円を求刑している。(飯田 憲、山下智寛)

(2009/09/27 15:35)


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