ギャンブル依存症の自助グループ「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)ハッピー高松グループ」の結成5周年記念のオープンミーティングが今月20日、高松市内であった。「幸せは金で買えると思ってた」「普通の人が理解できない金銭感覚」「負けても取り戻せる」--。参加者たちは、ギャンブルにのめり込んでいった体験を告白した。会場では録音やメモが禁止され、聞いた話を外に持ち出さないのがルール。許可を得た人たちの体験談を報告する。【三上健太郎】
パチンコや競馬などの賭け事がやめられなくなる病気、ギャンブル依存症。ミーティングには、四国や九州、中国、関西など各地の自助グループから約90人が集まった。
長崎県の男性(63)は「家には着替えか金を取りに帰ると思われていた。子どもの貯金箱を壊して取っていくとんでもない人間だった」と振り返った。21歳の時、競馬の日本ダービーで大当たり。翌日に会社を辞め、没頭した。アルコールとギャンブルの依存症に苦しみ、精神科に入退院を繰り返したが「自助グループのおかげで少しずつ変わってきた。でたらめな人間だが普通の生活ができる」と話した。
パチンコにはまり借金を重ねた末、自殺を図ったという宮崎県の女性(36)。ヤミ金にも手を出し、利息を払うために必死で打ち続けた。子どもが幼稚園にいる6時間では足りなくなり、追いつめられていった。「どうして借金してまでパチンコに狂ったのか」とは考えられず、自分を許せずに死を選んだ。一命はとりとめたが、夫とは離婚。入院を機に自助グループの存在を知った。
最初は意味が見いだせず、何も話せなかったが「仲間の前では素直になれる。私の恥を何も言わずに聞いてくれる人がいる」と思い始めている。「ちょっと前向きに生きていこうかな。いつか子どもに会えるかもしれないという希望を、仲間たちからもらった」
ミーティングでは、ギャンブル依存症からの回復や家族援助に詳しい滝口直子・大谷大教授の講演もあり、回復には「仲間のきずなと回復のステップを積んで現実と向き合うこと」と指摘した。滝口教授は自助グループの役割について「自分の苦しみを理解して受け入れてもらえる。互いの支え合いが大切だ」と話す。
一方で、ギャンブルが「依存症」という病気だと受け止められること自体、難しいのが現状だ。高松グループによると、うそをつく、時間にルーズ、一人の時間を作りたがる、金を無心する--などの行動が見られれば要注意。ギャンブル依存症の人たちには共通してみられる特徴だという。
同グループは現在、高松市と三豊市で定期的にミーティングを開催。「ギャンブル依存症は道徳的にだらしないと片づけられがちだが、世界保健機関も認定している一つの病気。一人で悩まずに参加して」と呼び掛けている。問い合わせは同グループ(090・1000・5432、ga‐happy‐takamatsu@ezweb.ne.jp)。
毎日新聞 2009年9月26日 地方版