外に出るのが心地よい季節になった。県庁近くでベンチに腰掛け、野菜ジュースを飲みながら、色付き始めた木々や秋空を流れる雲を眺めていると、20代前半の知人に「しがないサラリーマン」と酷評された。
「しがない」を辞書で引くと「つまらない」「貧しい」などとあった。今年30歳になったばかりだが、哀愁が漂っているように見えたのかと思うと、切なくなった。
秋の奈良は、人をもの悲しい気持ちにさせるのだろうか。奈良市内の寺を平日に訪ねると、参拝者は私だけ。ひんやりとしたお堂の中、少しさみしかったが、仏たちが優しく包んでくれた気がした。奈良の温かさを感じる季節でもある。 (高瀬)
毎日新聞 2009年10月23日 地方版