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無床化半年:地域医療の行方/3 病院間の診療応援 /岩手

 ◇変わらぬ医師の負担 4月以降も件数増加

 県立高田病院(陸前高田市)の石木幹人院長は、毎週火曜日、住田町の住田地域診療センターにいる。センター唯一の内科医が退職した4月末以降のことだ。「無床化前は住田町に行かなかった」という。病院に戻る前には、同町内にいる末期がん患者宅へ訪問診療へも行く。仕事は増えた。「入院患者も20~30人ぐらいいる。本当はあまり外を出歩きたくないんだが……」と、苦笑した。

 県医療局は、無床化の理由として「医師の過重労働解消」を挙げた。今年3月までは、地域診療センターに基幹病院から医師が派遣(診療応援)され、当直を勤めていた。医師は、休日・夜間も忙殺されていたからだ。

 しかし、県医師支援推進室によれば、今年度の診療応援の件数(8月末)は2595件と、前年度同月の2601件とあまり変わらない。中央と磐井病院は減少したが、1年間で医師が2人増えた遠野病院は35件から144件に、2人減った釜石も71件から96件、高田病院も50件から67件と増えたところが目に付く。

 ただ、応援の実数は、もっと多いとみられる。石木院長のように、住田町に住む高田病院の元入院患者への訪問診療は「応援」に数えられない。かといって、訪問診療をやめるわけにもいかない。末期がん患者の場合、自宅で看(み)取らせてあげたいと、退院させ、訪問診療で治療を続けている事情もある。無床化後、高田病院の入院患者は増え、赤字続きだった同病院の収支は改善した。住田センターで、新たに内科医1人の勤務が内定しているが、医師の多忙さが劇的に解消される見込みがない。

 陸前高田市は5月、こうした高田病院を支援し、維持・存続させるため、庁内会議を作った。市立の2診療所や市内の開業医との連携策を探る。県立病院の当直の一部を地元医師会で肩代わりする宮古市の例を想定する。だが、陸前高田市は、開業医と市立診療所の医師を合わせて7人ほどだ。市内の医師団体「松風会」も高齢化のため、医師会機能を手放し親睦(しんぼく)団体に変わった。「医師の絶対数が足りない」。市民生部の清水久也部長が嘆いた。【山口圭一】

毎日新聞 2009年10月22日 地方版

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