けいこ場での会見で、南田洋子さんへの思いを話す長門裕之さん=21日午後、東京都中央区の明治座、関田航撮影
けいこ場での会見で、思わず泣く長門裕之さん=21日午後、東京都中央区の明治座、関田航撮影
「僕のいとしい、大好きな、すてきな女房が、サヨナラも言わないで永眠致しました」。長門裕之さんは21日、明治座での舞台「幸せの行方」に出演したあとで会見し、妻洋子さんの死を報告した。
午前の舞台が終わったあと、妻の死を知ったという。午後の舞台はいつも通り務めた。だが会見で「僕の素晴らしい思い出のなかで……洋子は生きてますから。これは、永遠のものですから」と語ると、涙がほおを伝った。
近年は洋子さんを介護する日々だった。05年ごろ、洋子さんがセリフを覚えられなくなり始める。認知症だった。症状が進む中、自宅で献身的に介護する日々が続いた。
08年11月、介護の様子がテレビ番組で放送されると、20%を超える視聴率を記録した。長門さんは、洋子さんの病状を映像で公開した理由について当時、「(認知症は)多くの人が直面することだから、ありのままを記録して欲しかった」と語った。
会見でこの期間を振り返り、「(介護の日々が)僕をよみがえらせてくれた。人生観を変えてくれた。本当に楽しかった」と語った。
今月17日、洋子さんは倒れる直前に、普段は動かない右手で長門さんの指を強く握ったという。痛い痛い、と無理に離した。「あれが最後の、意思表示だったのかな」(松田史朗、高津祐典)