2009年09月18日 (金)おはようコラム 「ドイツ総選挙と脱原発政策」 

(阿部キャスター)
おはようコラムです。

今月27日に迫ったドイツの総選挙では、原子力発電所を段階的に廃止する、いわゆる「脱原発政策」の堅持か見直しかが争点のひとつで、国際的な関心も高まっています。百瀬解説委員です。

 

Q:ドイツの原発政策が国際的に注目されるのはなぜか?

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A:ヨーロッパではチェルノブイリ原発事故の影響もあって、80年代から脱原発政策が広がる。ところが温暖化という大問題に直面して、スウェーデン、イタリアと政策転換する国が最近相次ぐ。ドイツは、一定の運転年数を経た原発を順次閉鎖していく計画だが、大国ドイツにまで、こうした政策転換の波が及ぶのかどうか、関心を呼んでいるわけだ。

 

Q:ドイツのそれぞれの政党はどういう立場をとる?

A:見直し派は、メルケル首相率いる保守系のキリスト教民主・社会同盟と中道の野党・自民党で、原発の運転期間を延長すると主張。メルケル首相と大連立を組む社会民主党と他の野党は政策の堅持を訴えている。メルケルさんは大連立を解消して、元々考え方が近い自民党と新政権を組みたい考え。世論調査をみると、両党を合わせた支持率は48%から50%と過半数に迫る勢い。終盤戦の選挙戦が思い意味を持つ。

 

Q:大連立政権も脱原発政策を支持してきたのに、なぜメルケルさんは方針を変えた?

A:最大の理由は温暖化対策だ。ドイツの電力源の半分近くは石炭火力、石炭火力への依存を減らしながら安定した電力供給を続けるには、当分の間原発に頼らざるをえない。しかも、次の政権の任期中には17ある原発のうち7基が閉鎖される予定で、この大量閉鎖を避けるためにも、今、政策転換が必要というわけだ。一方の社民党などは、太陽光や風力発電をもっと普及させれば、原発に依存する必要はないと反論。

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Q:メルケルさんの思惑通りいくだろうか?

A:選挙戦で優勢なのは確かかだ。しかし、見直し派は、運転期間を何年延長するのか具体的に触れていない。この夏に北部の原発でトラブルが起き、国民の間に安全性への不安が広がっている。たとえ選挙に勝利したとしても、放射性廃棄物の処理を含めたきちんとした将来展望や安全対策を示さないかぎり、すんなり政策転換とはいかないかもしれない。

 

投稿者:百瀬 好道 | 投稿時間:08:15

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