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無床化半年:地域医療の行方/1 危機的な救急受け入れ /岩手

 経営効率化と医師不足を理由に県医療局が地域診療センター5カ所を無床化し、今月で半年間が過ぎた。無床化された施設を民間法人に移管を目指す動きがある一方、移管先が見つからず途方に暮れる地域もある。県が錦の御旗(みはた)に掲げた「地域医療の崩壊を食い止める」ことはできるのか。危機的な財政状況の中、4月以降も医師の減少に歯止めはかからない。無床化された地域を巡る現状と課題を探った。【山口圭一】

 ◇搬送先が決まらない!? 不安募らす住民たち

 宮城県境から北に約500メートル。一関市花泉町永井の集落に17日夕方、1台の救急車が到着した。70歳代女性が腰あたりに痛みを覚え119番通報した。だが、女性を乗せた救急車はなかなか出発しない。「(搬送先に)断られているらしい」。近くに住む農業、及川多賀志(たかし)さん(60)は、両親の搬送を断られ続けた約10カ月前の出来事を思い出した。「人ごとじゃない」と顔を曇らせた。

 及川さんの両親は今年1月、立て続けに体調を崩した。母、猛子さん(84)の時には、県立磐井病院など一関市内で4カ所、隣県の栗原や登米市内も含め7~8病院に連絡したが、「ベッドの空きがない」「医師がいない」などの理由で断られた。約1時間、「痛い、痛い」と猛子さんのおなかをさする手が疲れて動かなくなってきたころ、隣町の藤沢町民病院への搬送が決まった。腸閉塞(へいそく)だった。

 県医療局は、1月に花泉町で開いた説明会で、住民の不安に対し「救急の場合は磐井病院で受け入れます」と答えた。だが、県立磐井病院も「物理的に受け入れられない場合もある」(佐川義明事務局長)状況だ。無床化前ですら受け入れはいっぱいなのだ。猛子さんが苦しんだ時、病院は救急患者を3~4人抱え、脳出血の疑いや盲腸、頭部外傷など、当直医3人が処置に追われていた。「待たせることになる」と他病院を勧めた。この日は午後5~12時だけで21人が受診していた。

 一関市消防本部によると、08年に救急搬送された患者は5155人。うち磐井病院は2234人、花泉センターは71人。宮城県内や奥州市などにも296人が運ばれた。花泉センターの受け入れがなくなった今年4月以降、磐井病院の医師は増えず、一関市内の千厩病院も1年半で医師が5人減った。受け入れ能力は上がらない。消防課の小野寺正行さんは「救急患者が重なると搬送が難しい」と、こぼす。

 及川さんは、説明会の県医療局の言葉を思い出すたび、「実際は違う」と思う。いつ急病に見舞われてもおかしくない両親と、及川さんは親子3人で今日も暮らしている。

毎日新聞 2009年10月20日 地方版

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