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生徒も教師も問題だらけの「困難校」 熱意で変えた

10月19日11時12分配信 産経新聞

生徒も教師も問題だらけの「困難校」 熱意で変えた
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広島国際大学のオープンキャンパスに参加した生徒=今年6月(写真:産経新聞)
 日教組の影響が強い広島県で組合教師の激しい抵抗を受けながら荒れた学校の建て直しに挑んだ校長がいる。広島県呉市の市立呉高校の中塩(なかしお)秀樹校長(56)。赴任当初、近隣から苦情が絶えなかった学校は取り組みの中で大学進学者も増え、部活動も活性化した。広島では県立世羅高の校長が自殺した事件から10年たつが、一部の学校ではいまなお組合教師の抵抗が根強く学校運営に苦心する校長が多い。中塩校長は「正しいことは生徒に伝わり学校は必ず変わる」と話す。(福田哲士)

 ◆バリケード

 平成18年春、教頭として赴任した中塩は、職員室に入って目を疑った。教頭席が四方をホワイトボードに囲まれ、視界がふさがれた状態。まるで職員室の中で隔離されたようだった。

 世羅高の校長の自殺問題などを契機に、広島県教委は、学校評価や教員の人事評価制度を導入するなど組合への是正指導を進めている。しかし市立呉高では、学校建て直しに取り組もうとする中塩に組合教師から反発が強く、「職員会議で何か発言すると大声で必ず猛反対された」。

 当時、同校は遅刻する生徒が多く、教師への暴力や万引などの犯罪行為に対する特別指導は年間約20人を数えた。中退者も毎年5人前後。毎朝、近隣からの苦情電話を取るのが中塩の仕事。「教育困難校」に近い状態だった。

 「生徒が悪いのではなく、教師が何もしないという状況だった」。生徒指導は真面目に行われず、教師が授業に遅刻するのは日常茶飯事。定期試験の問題を刷り忘れたという教師もいた。「教師困難校」だった。「生徒に『勉強しても仕方がない。高校生活を楽しめ』というような指導をしていたこともある」

 ◆改革

 19年、中塩は同校校長に昇任、本格的な改革を始めた。生徒にとって何が必要なのか。それを最大の課題とした。

 一日市役所職員体験やボランティア参加、社会人講師による授業などを積極的に導入。1年生には入学してすぐに将来のライフプランを書かせている。「生徒たちには夢を持たせることが大切。チャレンジする勇気を与えてあげたい」

 一方、学校の経営方針には、「授業時間の数分前には教室に入るように」と明記した。対象はもちろん教師だ。昔からの悪習を断ち切ろうとした。

 それまで校長から注意もされず、「事なかれ」に慣れきっていた教師からは当然のように激しい抵抗が起こった。

 《バカ校長が学校を変えおる》《国歌を歌うように指導された》。インターネットの掲示板などに書き込まれた。校舎の壁にスプレーで悪口を書かれたこともある。

 組合教師の抵抗の実態を知らない保護者からもなかなか協力が得られなかった。しかし、中塩は地道にやれる改革を進めた。「生徒が変われば、教師も変わらざるを得なくなる」

 ◆遅刻者激減

 まず変わったのが生徒だった。遅刻者が激減した。今年4月は一日の遅刻者が0・3人。ほとんど誰も遅刻をしなくなった。

 校則違反の制服を着た生徒が減った。中退者は昨年は1人だけだった。国公立大学の合格者数も二けたに伸びた。「生徒たちの行動が変われば、数字は後からついてくる」

 6月中旬に行われた広島国際大学とのオープンキャンパスでは、2年生約160人が3日間、大学生に混じって看護や情報工学などの講義を受けた。全国でも珍しい取り組みだった。

 生徒たちに意欲が生まれ始めている。それに応えるように今では教師の7割が中塩の改革に協力的だという。今年5月からは、教頭の机は職員室の一番前に設置された。ホワイトボードはもうない。「これが当たり前のこと。まったく止まってしまい、さびついた歯車は動かすまでが大変。しかし、抵抗されるほどやりがいもある。最初の一歩を踏み出すことが大切」(本文敬称略)

 ■広島の教育問題 卒業・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱が行われない、道徳の時間がないなど学習指導要領を逸脱した偏向教育や、校長の権限を束縛する念書を校長と教職員組合が結ぶなど問題が次々明らかになり、旧文部省が平成10年に広島県教育委員会を是正指導した。正常化に取り組む過程では11年に県立世羅高校校長が自殺する痛ましい事件が起きた。

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最終更新:10月19日11時12分

産経新聞

 

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