臨床研修医(medical resident)の医療ミス(過誤)の原因となるのは疲労だけではなく、金銭的な苦境や家庭の問題をはじめとする悩みも大きく関与していることが、新しい研究で明らかにされた。研究を率いた米メイヨークリニック(ミネソタ州)のColin P. West博士は、新しい研修ガイドラインについて検討する際には、疲労とは独立した悩みについても考慮すべきであるとしている。
West氏によると、内科研修医の自己申告による重大な医療ミスの発生率は、疲労のほか、生活の質(QOL)の低下、燃え尽き感、うつ症状、その他の悩みの徴候があると増大するという。現在、研修医および患者の安全性向上を目的とした医学研修の改革の取り組みでは、疲労に焦点を当てたものがほとんどであるが、今回の研究から研修医の福祉面にも注目する必要があることが示されると同氏は述べている。この報告は、米国医師会誌「JAMA」9月23/30日号に掲載された。
米国では、年間10万人が防止可能な医療ミスにより死亡しているという。今回の研究では、2003〜2008年に3カ月ごとの調査を受けた内科研修医430人のデータを使用。調査では、医療ミスおよび生活の質、疲労、燃え尽き感、うつおよび眠気について尋ねた。医療ミスについて回答した378人のうち、39%に少なくとも1回の重大な医療ミスがあった。医療ミスと疲労との間には関連がみられ、疲労スコアの高いときは医療ミスの発生率が14%増加し、眠気スコアが高いときはミスの発生率が10%増加した。また、燃え尽き感、うつおよび全体的な生活の質も医療ミスに関連していることが判明した。
米マイアミ大学教授David J. Birnbach博士は、研修医の労働時間制限などの改革によって状況は劇的に改善されつつあるとしながらも、さらに改革が必要であると指摘。「労働時間が短縮されても、研修医の疲労の状況や、病院側の不満について監視するシステムが存在しないことが問題だ」と述べている。同氏はこのほか、医師の大部分を占める高齢の開業医の悩みや疲労に対処する方法がないことについても懸念を示している。
同じ号に掲載された別の報告では、薬物療法や自己認識訓練、「有意義な臨床経験」に関する話などを含むプログラムへの参加が医師の福利向上をもたらし、患者への感情移入が増大するとともに「精神的疲労」や燃え尽き感が軽減することが示されている。医師のこのような変化が患者との関わりにも有益な変化をもたらすと、研究では結論づけている。
原文
[2009年9月22日/HealthDay News]
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