「ミッション・ゴージ道路(一般道)1マイル(1.6キロ)」の標識を過ぎ、右カーブを抜けると、眼前に林が広がった。そしてすぐに「終点」の看板。
長い坂を下ったところにある終点は、暴走車にとっては行き止まりに等しい、丁字路交差点だった。マークさんと同様に暴走車を運転していると想像すると、逃げ場を失った絶望感を感じた。
20年の経験があるベテラン高速隊員のマークさんは、暴走する車を巧みに操ったとみられ、終点まで、何台もの車を、衝突することなく追い抜いた。
しかし、最後の最後のところで、交差点を左折しようとしていたフォード製の大型車に後ろから追突した。
クリスさんは交信の最後の方で「ホールドオン(つかまって)、プレイ(祈って)」との言葉を残した。
マークさんは必死の思いで車と格闘しながら、時速190キロで走る自車を止めるには追突しかないと思ったのか。そんな考えが頭をよぎった。
セイラーさん一家が住んでいた新興住宅街のあるチュラ・ビスタ市を訪ねた。
近くに住む男性は「熱心に教会に通う一家だった」と話した。クリスさんは事故の2週間前、こちらに仕事が見つかったので北カリフォルニアからセイラーさんの家に越してきたという。
4人の葬儀を執り行った主任牧師のジェフ・ブラウナーさん(52)に会った。
13歳の若さで召されたマハラさんについて、とても活発な女の子で、サッカークラブのキャプテンとして仲間を引っ張っていた、と教えてくれた。そして「家族はとても仲がよかった」と話した。