【サンディエゴ(米カリフォルニア州)=中川仁樹】片側4車線の高速道路の終点は丁字路だった。トヨタの高級車レクサスが暴走し4人が亡くなった死亡事故。敬虔(けいけん)なクリスチャン一家をおそった、恐怖と絶望の数キロメートルをたどった。
事故現場に立った。辺りの草むらは焦げ、プラスチックやガラスが散乱していた。
8月28日、レクサス「ES350」は時速約190キロで道路のさくに激突した。目撃者によると、さくを越え、数回転して林の手前の草むらで大破、炎上したという。事故から1カ月半が過ぎた今も花が手向けられていた。
メキシコ国境に近いサンディエゴ市の郊外を南北に走る州の高速道路125号。
地元の記者によると、車の四隅にある黄色のハザードランプを点滅させながら、猛スピードで北上するレクサスが目撃されたのは、州間高速道路8号と交わるあたりだったという。事故現場の約8キロ手前だ。
運転していたのはカリフォルニア州高速警察隊員マーク・セイラーさん(当時45)。妻のクレオフェさん(同45)、娘のマハラさん(同13)、クレオフェさんの弟のクリス・ラストレラさん(同38)が同乗していた。
後部座席にいたとみられるクリスさんが「911コール(緊急電話)」をしたのは、交信の長さから、さらに5キロ進んだ、事故現場の3キロ手前のあたりとみられる。アクセルが戻らないなど事故原因を推定させる情報を世に伝えた交信だ。
タクシーの助手席で、4人が最期に体で感じ、目にしたであろうものを確認した。
周りの車の多くは時速100キロ程度で走っている。舗装の継ぎ目は大きく、ゴツゴツとした衝撃が座席にも伝わる。カーブと上り下りが連続する。