鳩山政権が初めて編成する10年度予算で各省庁の概算要求が16日まとまり、一般会計の要求総額は95兆380億円と過去最大に膨らんだ。「子ども手当」など政権公約(マニフェスト)実現に向けた4兆3767億円が総額を押し上げた。さらに各省が金額を明示しない「事項要求」を加えると、実質的には少なくとも97兆円程度になるとみられる。
野田佳彦財務副大臣が16日、発表した。金額を明示せず、概算要求より後回し扱いとなる事項要求は、厚生労働、文部科学、総務、環境の4省と内閣府だけでも約30項目を盛り込んだ。朝日新聞の取材では、金額は全省庁で計2兆円は下らないとみられ、これらも加えた実質的な要求額は97兆円を超える計算だ。
公約関連の新規施策では、厚労省が子ども手当の半額実施に事務費を含めて約2兆3千億円、文科省が高校の実質無償化に約4600億円、農林水産省が農業の戸別所得補償関連に約5600億円などを盛り込んだ。
省庁別で見ても、社会保障や雇用問題を預かる厚労省の要求額は09年度当初予算より約3兆7千億円膨らみ、約28兆9千億円に達した。
一方、国土交通省の公共事業の要求額は約4兆9千億円と09年度当初予算より14%減額。既存事業の切り込みも進めた。ただし、政権公約の関連分を除いた既存予算全体での減額は約1兆3千億円にとどまっており、新規政策に必要な額にはまだ不十分だ。
これらの結果、概算要求の総額は09年度当初予算を約6兆4900億円上回った。
事項要求としては、総務省が地方交付税について約1兆1500億円分の増額を要求。厚労省も、中小企業健保への税金負担率の引き上げなど算定可能な分だけでも約6200億円を要求したほか、数千億円を必要とする診療報酬引き上げや金額が未定の雇用対策なども盛り込んだ。
野田副大臣は概算要求発表の記者会見で、09年度税収について、見積もりより6兆円少ない40兆円以下に落ち込む可能性を指摘。「税収の落ち込み見合いの公債増発はやむを得ない」と述べた。10年度も税収が低迷する可能性が高いが、新規国債発行額については「(現時点で09年度に予定する)44兆円を下回るとの方針を堅持する」とし、抑制に努める姿勢を示した。
予算編成の焦点は今後、鳩山内閣が新設した行政刷新会議と、財務省の査定作業で、特別会計も含めてどこまで要求に切り込めるかに移る。歳出膨張と歳入減少という「二重苦」での作業となる。