その昔、吉野町宮滝の吉野川は岩飛びの名所だった。「善く水練なる者、石頭より水中に投げて、流に随(したが)うて下流に出づ」と、大和名所図会(歴史図書社)にある。切り立つ「二百文岩」は、岩飛びの見物料が由来と、吉野歴史資料館の池田淳館長が教えてくれた。江戸時代からは、吉野杉を運ぶ水運の難所にもなった。
時代は移り、岩は若者たちの飛び込みスポットになった。吉野署によると、宮滝周辺では98~09年の12年で11人が命を落とした。うち4人は飛び込みが原因という。
今年から県が委託した巡視は先月末まで続いた。自然を軽視し、体力を過信した無謀な飛び込みは、善く水練なる者からおしかりを受けそうだ。(大森)
毎日新聞 2009年10月14日 地方版