J1浦和に勝った瞬間、喜びを爆発させる松本山雅のサポーター=11日、松本市のアルウィン |
「J」は夢じゃない−。試合終了のホイッスルが響くと、スタンドを緑色に染めた松本山雅FC(松本市)サポーターが歓喜の声を上げた。サッカー北信越リーグの松本山雅が11日、松本市のアルウィンでJリーグ1部(J1)浦和を2対0で破った天皇杯全日本選手権2回戦。2007年アジア王者を倒す大金星に、スタンドは興奮に沸いた。
この日は赤いユニホームの浦和サポーターも埼玉県などから集結し、観客数は今年最高の1万4494人。両サポーターが向き合うようにスタンドを埋め、山雅ファンの諏訪郡下諏訪町の会社員男性(34)は「相手が多いと応援にも張り合いが出る」。
前半の先制点に続き後半27分、阿部琢久哉選手が2点目を決めると、山雅サポーターは「すごい」「信じられない」。試合終了が近づくにつれ「なんか涙出てくる」「鳥肌が立ってきた」と感極まったような声も漏れ、勝利の瞬間、拳を突き上げてハイタッチを交わした。
スタンド前列で「松本山雅」コールを送っていた安曇野市の病院職員、室賀真智子さん(26)は試合後、「まだ信じられない。選手は頑張って守った。この勢いで(北信越リーグの上の)JFLに行って」と興奮気味だった。
松本山雅の本格的な強化が始まったのは5年前。02年日韓共催ワールドカップ(W杯)でパラグアイ代表のキャンプ会場にもなったアルウィンを軸に地域の活性化を目指す地元の若手経営者らが、NPO法人「アルウィンスポーツプロジェクト」を設立、強化に乗り出した。
応援の輪は年々広がり、リーグ戦では2万人収容のアルウィンに毎試合のように数千人が入場。この日も主催試合でないとはいえ大観衆が集まり、その目の前で浦和に快勝した。同法人の大月弘士理事長は「私たちが目指してきた素地が十分にあることが分かった」と感動に浸り、応援団「ウルトラスマツモト」で応援指揮するコールリーダー小松洋平さん(23)も「今日初めて観戦に来たお客さんも、山雅のファンになってくれたんじゃないかな」と喜んだ。
一方、J1、J2より格下のJFL入りを目指す松本山雅にまさかの初戦敗退を味わった浦和サポーターは、ぼうぜんとピッチを見つめた。埼玉県から夫と応援に来た会社員石川亜弓さん(28)は「長野まで来たのに…」と悔しがったが、「レッズに勝ったからには優勝してほしい」と山雅にエールを送った。