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悲願の「外環道」建設遅れ、民主都議も落胆

10月10日3時8分配信 読売新聞

悲願の「外環道」建設遅れ、民主都議も落胆
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読売新聞
 「渋滞解消の切り札なのに。建設が遅れてしまう」――。東京外郭環状道路(外環道、練馬―世田谷間)の建設事業で、計71億円の補正予算のうち9割以上の執行停止が9日、国土交通省の馬淵澄夫副大臣らから発表された。

 停止を免れたのは測量・設計費5億円のみ。東京都の担当幹部からは「地元自治体の意見を一切聞かれなかった。これでは“非民主党”だ」と皮肉交じりの嘆息が聞こえ、政権交代に一役買った民主党都議からも「残念の一言」と疑問の声が出た。

 「国交省の出先事務所に聞いても『わからない。本省に聞いてくれ』の一点張りで、現場に情報がない。政治主導にもほどがある」。外環道事業を担当する都建設局には、発表にあたり国交省から連絡は一切なく、情報収集に追われた担当幹部は怒りに語気を強めた。

 都にとって、外環道建設は「悲願」だ。16キロに及ぶ練馬―世田谷間は1966年に都市計画決定されたが、地元の反対運動で凍結。99年に就任した石原慎太郎知事が、「渋滞は東京の致命的な欠点」などと凍結解除を訴え、計画が動き出した。

 今回、事業費が国の補正予算にやっと盛り込まれ、「渋滞解消は鳩山政権が掲げる温室効果ガス削減にも寄与する。大事な事業なので、執行停止はないだろう」との見方が強かった。

 それだけに、用地買収費など66億円の停止に落胆が広がったが、別の都幹部は測量・設計費が残ったことに望みをつなぎ、「着工は遅れても、事業自体は続ける考えだと受け取った。用地買収はできなくても住民向けの説明会など必要な措置を早く始め、早期着工を目指すべきだ」と注文した。

 今月7日には、民主党を含む超党派の都議が、前原国交相に執行継続を要望したばかりだった。民主都議団の大沢昇幹事長は「補正見直しという党本部の大きな波にのみ込まれてしまった。今後も必要性を訴えたい」と無念そうに話した。

 一方、建設に慎重な立場の住民団体「外環道検討委員会」の運営委員、大塚康高さん(67)は「少なくても予算が付くと言うことは、事業が進むということ」と不満を語った。

 ◆ダム凍結「事前説明ない」怒りの声◆

 ダムは建設されるのか、されないのか。9日に突然発表された48ダム事業の一時凍結方針が、地元に波紋を広げている。

 「信頼関係を無視している」「意図が不明だ」。詳細な事前説明もないまま、今年度は新たな工事段階に進まない、という前原国土交通相の真意が見えず、現場からは怒りの声も上がった。

 「これまでは、どんな内容の発表でも必ず地方整備局から事前に説明があった。長年築いてきた信頼関係を無視する行為だ」。丹生(にう)ダム(滋賀県余呉町)の建設推進住民らでつくる対策委員会の三国昌弘委員長は9日、前原国交相の「凍結」表明に憤りを隠さなかった。

 同ダムは水没予定地域の40戸が移転し、県道の付け替え道路の工事をほぼ終えたが、本体工事は未着工だ。

 ダム工事4段階のうち、2段階目の生活再建工事を行っている利賀ダム(富山県南砺市)。建設推進の上田信雅・砺波市長は、「上流から下流まで住民の反対はない」と強調し、国交相に理解を求めていく意向を明らかにした。同ダムは2008年度の完成予定が22年度にずれ込み、総事業費も900億円から1150億円にふくらんでいる。

 11年度の本体工事着工を予定する横瀬川ダム(高知県宿毛市)について、田中全・四万十市長は「今年7月の陳情では、国交省の担当者から『地元要望が強いモデルケースで優先して取り組む』とお墨付きをもらったばかりだ」と困惑を隠さなかった。

 既に完成が間近に迫ったダムの地元でも困惑と戸惑いの声が上がった。年内に水をため、来年度完成を目指す長井ダムの地元で、山形県長井市の遠藤健司・企画調整課長は「計画の中止はまさかないとは思うが停滞すると困る」と心配する。

 一方、前原国交相が既に中止を明言している八ッ場(やんば)ダムの建設推進を求める群馬県長野原町の高山欣也町長は、この日、前原国交相と面会したが主張はすれ違ったまま。「八ッ場ダムは、48ダム建設凍結の外堀を埋めるために使われた」と憤りをあらわにした。

 これに対し、川辺川ダム(熊本県)建設予定地にある相良村の徳田正臣村長は「国のダム事業を一時凍結して必要性を精査する新政権の手法は、大きな方向性としては賛成できる」と話した。 

最終更新:10月10日3時8分

読売新聞

 

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